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体操女子・宮田笙子「懲戒ではなく代表辞退」のナゼ…“喫煙・飲酒”問題で協会が認めた「内部からの情報提供」「今後のサポート」重要な論点 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2024/07/20 17:01

体操女子・宮田笙子「懲戒ではなく代表辞退」のナゼ…“喫煙・飲酒”問題で協会が認めた「内部からの情報提供」「今後のサポート」重要な論点<Number Web> photograph by AFLO

喫煙と飲酒を認め、オリンピックへの出場を辞退した宮田笙子

 違反した場合、別に定められている「倫理規程」により処分を科する、とあり、そこには「違反行為に対する処分は、懲戒委員会で検討し、理事会によって決議する」とある。具体的にこういうケースならこう、と定められているわけではない。ただ今回は「辞退」であるので、委員会による検討に至らなかったことになる。

協会が認めている“内部からの情報提供”という事実

 会見に先立って、すでにいくつもの報道がなされていた。その段階から会見後に至るまで大きな反響を呼び、喫煙、加えて飲酒により五輪代表ではいられなくなったことについて、当然とみる向きも、厳しすぎるとみる向きもあるという。結果的に辞退という自ら返上した形式ではあるが、そうでなければ、先の通り、さまざまな違反に対する処分は、懲戒委員会で検討することになっていたはずだ。どう結論を出していただろうか。

 スポーツはルールに則って行われ、ルールの順守はスポーツを成立させる根幹でもある。何らかの処分は当然あるだろう。ただ、仮に辞退していなくとも、五輪代表はく奪に値する行為であったとは言いがたい。本来なら、19歳であることを鑑み、例えば教育的に指導していくことをもって処分としていくような話であるように思える。

「主将という立場なのにどうか」という声もあるという。それでもまだ19歳であり、また東京五輪後の世代交代により、エースとして引っ張る立場に自然と押し出された状況もある。主軸としての期待を背負わざるを得なかった。それに対するサポートはどうだったのかも検証されるべきだろう。

 ただ、仮にこのまま出場したとしても、おそらくは常に今回の問題がつきまとい、ずっとクローズアップされ続けることになる。その中で競技をすることがかえってダメージとなることもあり得る。また、今回の情報提供は外部からではなく、内部からのものであることを協会は認めている。さまざまな事情からして、辞退を選択したのもやむを得なかったとも言える。

【次ページ】 「体操協会全体の問題」「今後のサポート」重要な論点

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