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「公立意識」は負け犬根性の象徴…なぜ“東海大相模OBの41歳”公立校監督は本気で甲子園を目指すか「変に謙遜する必要もない」 

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大利実

大利実Minoru Ohtoshi

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photograph by Minoru Ohtoshi

posted2024/07/08 11:02

「公立意識」は負け犬根性の象徴…なぜ“東海大相模OBの41歳”公立校監督は本気で甲子園を目指すか「変に謙遜する必要もない」<Number Web> photograph by  Minoru Ohtoshi

横浜清陵の野原慎太郎監督。この春ベスト8で、夏は第二シードから戦う

『「公立」「私立」意識の禁止』
・「公立意識」は負けの言い訳づくり
 (自分たちを過小評価し、可能性を限定しているだけ)
・「私立意識」は相手を見上げるだけ
 (試合をする前から負けている)

 神奈川の異常な「公立意識」は、負け犬根性の象徴。野球は私立だから勝つのではなく、「いい投手」「いい野手」「いい裏方」がいるから勝つ。自分がそれになるだけのこと。付加価値は不要。野球をやれ。

 こんなにストレートな言葉もなかなかないだろう。言うまでもなく、試合の勝敗は野球の力で争う。私立だから勝つわけではなく、公立だから負けるわけでもない。

 個々の能力を上げるために、たとえばスイングスピードであれば、「A評価=145キロ以上」「B評価=140~144キロ」「C評価=135~139キロ」「D評価=130~134キロ」「E評価=129キロ以下」と、全国クラスとの比較をわかりやすい数字で示している。

優勝したければ、優勝するチームのようにふるまえ

 さらに、横浜清陵に赴任してから、新たに加えたのがこの言葉である。

『なる前になれ』
 優勝したければ、優勝にふさわしいチームになれ
 優勝したければ、優勝するチームのようにふるまえ

「“甲子園”をあえて口に出す理由のひとつがこれです。『優勝したことがないから、勝ち方がわかりません』では一生、甲子園に行けない。甲子園に3年間出ていない学校は、どの学校も初出場と同じだと思っています。自分が高校時代にセンバツに出場したときは、東海大相模にとっては5年ぶりの甲子園でしたが、選手も監督も初めての甲子園で、全員が知らない場所に行く空気でした。甲子園に行ったことがないからといって、変に謙遜する必要もない。『優勝する前から、優勝するにふさわしいふるまいをすることが大事』と、伝えています」

 大師のときもそうだったが、勝利したあとの行動に、チームが高い場所を目指していることが感じ取れる。2023年夏の1回戦で藤沢西を下したあと、応援席への挨拶を終えると、ベンチに戻る選手から、「次だ、次!」という言葉が何度も聞こえてきた。勝利の余韻に浸ることなく、次戦に向かうマインドができあがっている。

「実際は、帰りのバスで1分間だけ、喜んでいいことにしています。周りの人の目もありませんから。だから、1分間は雄叫びを挙げながら、全力で喜んでいますよ。そのあとはもう次の試合の準備。これは、門馬さんの教えですけど、『勝ったところから負けが始まる』。本当にその通りだと思います」

つづく

野原慎太郎(のはら・しんたろう)

1982年8月25日生まれ、大阪府豊中市出身。東海大相模-横浜国大。高校3年春にセンバツ優勝を経験。横浜国大の大学院を経て、2007年から岸根に赴任し、2012年に大師に異動。2015年夏、2016年春、2017年夏とベスト16入りを果たした。2020年春から横浜清陵に移り、同年夏の新チームから監督。2021年夏に自身初のベスト8進出。家庭科の教諭を務める。

#4に続く
「えらい世界に来たな…」巨人ドラ1捕手がブチ当たったカベと重圧、戦力外「焦りが先行していました」東海大相模の監督で今、生かすこと

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