甲子園の風BACK NUMBER

「慶応は本当強かったですよ」横浜高校監督がホンネで語る23年夏・慶応戦“あの判定”と敗因「選手も人生をかけて戦っていますから」

posted2024/07/08 11:00

 
「慶応は本当強かったですよ」横浜高校監督がホンネで語る23年夏・慶応戦“あの判定”と敗因「選手も人生をかけて戦っていますから」<Number Web> photograph by Asahi Shimbun

2023年神奈川大会決勝、慶応に敗れて涙する横浜高校ナイン

text by

大利実

大利実Minoru Ohtoshi

PROFILE

photograph by

Asahi Shimbun

 この夏も始まる甲子園への道。日本列島の中で最も激戦区と言われる神奈川県の各校監督はどのようなことを考え、球児と向き合っているのか。『高校野球激戦区 神奈川から頂点狙う男たち』(カンゼン)から一部転載で横浜・村田浩明監督(37)と横浜清陵の野原慎太郎監督(41)の稿からご紹介します(全3回の第1回/第2回第3回も配信中)
『サッカー止める蹴る解剖図鑑』(エクスナレッジ)※書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします高校野球激戦区 神奈川から頂点狙う監督たち』(カンゼン) ※書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

忘れられない2023年夏、決勝敗退と家族との時間

 2023年8月初旬、村田浩明監督は横浜市金沢区のグラウンドを離れ、妻と小学4年生の息子とともに九州にいた。3泊4日。温泉に入り、美味しいご飯を食べ、家族3人でゆったりとした時間を過ごした。

 2013年秋に白山の監督に就いて以降、8月にまとまった休みを取ったのはこれが初めてのことだった。

「あの決勝のあと、ぼくも家族も精神的に落ちるところまで落ちました。新チームの選手には本当に申し訳ないですけど……、夜も眠れずにずっと引きずったまま。それを知った福岡の朝倉医師会病院の山木宏道先生(整形外科医)が、『監督を助けたい。一度、監督も家族も心を休めてください』と九州旅行に招待してくれたんです。福岡の招待試合のときに知り合った同じ年の先生で、発想が豊かで面白い。グラウンドはコーチ陣に任せて、家族と過ごしてきました。おかげで、『こうやって助けてくれる人がいるのだから、また頑張らなくてはいけない』と前を向くことができて、本当に感謝しています」

 7月26日、慶応義塾との決勝は8回裏まで2点リードする展開も、9回表に杉山遙希(西武)が渡邉千之亮(慶応義塾大)に逆転3ランを打たれて、3連覇を逃した。

緒方の名誉を回復するためにも率直に

 9回表の守りで、微妙な判定があった。

 無死一塁から丸田湊斗(慶応義塾大)のセカンドゴロを峯大翔がさばき、ショートの緒方漣(國學院大)に送球。緒方は右足で二塁ベースの一角を触れたようにも見えたが、二塁塁審のジャッジは「セーフ」。タイミングは完全にアウトだったこともあり、村田監督は確認のために塁審のもとに何度も選手を送った。

「緒方に確認したら、『絶対に踏んでいます』と。監督としては、選手の言葉を信じるしかありません」

 閉会式を終えたあとにも、審判室に向かい再度確認を求めた。

【次ページ】 本当に強いチームなら「9回裏」に…

1 2 NEXT
横浜高校
村田浩明
緒方漣
慶應義塾高校

高校野球の前後の記事

ページトップ