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「慶応は本当強かったですよ」横浜高校監督がホンネで語る23年夏・慶応戦“あの判定”と敗因「選手も人生をかけて戦っていますから」
posted2024/07/08 11:00
text by
大利実Minoru Ohtoshi
photograph by
Asahi Shimbun
忘れられない2023年夏、決勝敗退と家族との時間
2023年8月初旬、村田浩明監督は横浜市金沢区のグラウンドを離れ、妻と小学4年生の息子とともに九州にいた。3泊4日。温泉に入り、美味しいご飯を食べ、家族3人でゆったりとした時間を過ごした。
2013年秋に白山の監督に就いて以降、8月にまとまった休みを取ったのはこれが初めてのことだった。
「あの決勝のあと、ぼくも家族も精神的に落ちるところまで落ちました。新チームの選手には本当に申し訳ないですけど……、夜も眠れずにずっと引きずったまま。それを知った福岡の朝倉医師会病院の山木宏道先生(整形外科医)が、『監督を助けたい。一度、監督も家族も心を休めてください』と九州旅行に招待してくれたんです。福岡の招待試合のときに知り合った同じ年の先生で、発想が豊かで面白い。グラウンドはコーチ陣に任せて、家族と過ごしてきました。おかげで、『こうやって助けてくれる人がいるのだから、また頑張らなくてはいけない』と前を向くことができて、本当に感謝しています」
7月26日、慶応義塾との決勝は8回裏まで2点リードする展開も、9回表に杉山遙希(西武)が渡邉千之亮(慶応義塾大)に逆転3ランを打たれて、3連覇を逃した。
緒方の名誉を回復するためにも率直に
9回表の守りで、微妙な判定があった。
無死一塁から丸田湊斗(慶応義塾大)のセカンドゴロを峯大翔がさばき、ショートの緒方漣(國學院大)に送球。緒方は右足で二塁ベースの一角を触れたようにも見えたが、二塁塁審のジャッジは「セーフ」。タイミングは完全にアウトだったこともあり、村田監督は確認のために塁審のもとに何度も選手を送った。
「緒方に確認したら、『絶対に踏んでいます』と。監督としては、選手の言葉を信じるしかありません」
閉会式を終えたあとにも、審判室に向かい再度確認を求めた。