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「残念っすよ、やっぱり」アーセナル冨安健洋25歳、劇的ゴール…2時間後、現地記者に告白した“失望”。現地ファン19歳は「トミはお気に入りさ」 

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田嶋コウスケ

田嶋コウスケKosuke Tajima

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posted2024/05/23 18:00

「残念っすよ、やっぱり」アーセナル冨安健洋25歳、劇的ゴール…2時間後、現地記者に告白した“失望”。現地ファン19歳は「トミはお気に入りさ」<Number Web> photograph by Getty Images

アーセナル冨安健洋(25歳)。最終節エバートン戦で今季2ゴール目をマークした

「普通に、その前にチャンスが1個あって、それを決めていれば、より簡単な試合にできたと思う。でもセカンドチャンスが来て、それをしっかり決めることができてよかったなと思います」

 実はシーズン終盤戦に突入した頃、冨安は「得点なりアシストなり数字を残さないといけない」と話していた。得点に直結するプレーで、チームの勝利に貢献したい――。優勝を目指すチームを、目に見える形で助けたいと語っていたのだ。しかもエバートン戦の序盤に、日本代表DFはビッグチャンスを逃していた。「冨安選手のゴールは、こうした気持ちの表れだったのでは?」と聞いてみると、サムライ戦士は「いや」と軽く否定し、次のように説明した。

「というより、チームが押し込んでいる状況で、僕のマークについていた選手がボックス内まで下がっていた。どちらかと言うと、そっちの方が大きいかなと思っています。

 あとは、 スペースが空く場所というか……。マルティン(ウーデゴール)のサッカーセンスというか、彼は空いてるスペースが常に分かっているので。自分がそこにしっかりと入っていけたのは良かったなと思います」

なぜ今季アーセナルは強かった?

 冨安の説明には補足が必要だろう。

 まず先制点を奪ったエバートンは、自軍で守備を固めてきた。冨安のマークについていた相手SBやMFも、ゴール前まで下がって守備の壁を築いた。そのため、彼らの守備ブロックの前には、スペースができていた。

 そこで冨安は、DFの自分がペナルティエリアまで入っていけば、自ずとフリーになると予測した。そしてアルテタ監督が「ピッチ上の指揮官」と称賛する、ウーデゴールのサッカーセンス。

 ノルウェー代表は、走り込んだ冨安の足元にピタリと合わせた。

 ゴールの形を事前に思い描いた冨安とウーデゴールの「サッカーIQの高さ」は言うまでもないが、冨安のゴールには、アルテタ監督がこれまで落とし込んできた「質の高いチーム戦術」も凝縮していたように思う。

 アーセナルの選手たちは、「相手の陣形」と「自分たちのボール位置」に応じて、各々が立ち位置を変える。いわゆる「ポジショナルプレー」に従ってプレーしている。11人がまるで精密機械のように、立ち位置を変えながら連携しているのだ。各選手がイメージを共有しながらプレーを続ける結果、流れるようなパスワークが生まれ、チャンスの山を築いている。

 冨安の得点シーンも、質の高い連携が生んだゴールだった。事前に「チャンス」と感じてペナルティエリア内まで走り込んだ冨安と、ほぼノールックでラストパスを入れたウーデゴール。日本代表DFの得点は、アルテタ監督率いるアーセナルの強さを端的に示していた。

冨安が記者に「逆質問」した日

 シーズン終盤、記者との質疑応答で興味深いやり取りがあった。

【次ページ】 冨安が記者に「逆質問」した日

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