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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
“東大野球部→メガバンクの銀行マン”が神奈川「野球強豪校の校長」に就任のナゼ…ビジネス界で言われた「ラグビー部と野球部の評価の差」とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by本人提供
posted2024/05/11 11:00
東大野球部で捕手として活躍した朝木秀樹氏。卒業後はメガバンクの銀行マンを30年務め、今年4月に横浜隼人高校の校長に就任した
イソップ童話の「ウサギとカメ」に思うこと
この春の入学式、あるイソップ童話を題材に挙げて、こんなふうにも語りかけた。
「ウサギとカメの話は、誰でも知っていると思います。先へ行ったウサギが、途中でいねむりをしている間に、カメに追い抜かれてしまった。『油断しちゃいけませんよ』というのが教訓ってことになってますが、実はこの話はもっと深い。ウサギとカメ、それぞれに目の中に捉えていたものが違っていたんです。
前に行ったウサギは、後ろにいるカメばかり見ていたから『まだ大丈夫』と油断してしまった。カメのほうはたとえゆっくりでも、ひたすら一心にゴールだけを見て前に進んでいた。自分の定めた目標に向かって、まわりに惑わされることなく、着実に歩みを進めた者が最後には大きな成果を得られるんです。みなさん、ぜひカメになりましょう!」
学校には、いろいろな生徒がいて、それでいいとも朝木さんは言う。
「勉強ひとつ取っても、できる子もいれば、そうでもない子もいます。できる子は、頑張ってどんどん先に進んでいけばいい。そこまでじゃない子は、少しずつ、少しずつ、時間をかけて自分を伸ばしていけばいい。仮にスタートが30点でも、次はそれが40点になればいい。40点じゃあ……って、親御さんはおっしゃるかもしれないけど、この『10点』が尊いんです。
80点を90点にするんじゃない。30点を40点にするって、ものすごい意欲と努力が必要なんですよ。わずかな上がり幅かもしれないですけど、この10点を大切にできる学校でありたいなって、思いますよね」
実は朝木さんがそんなことを思うようになった原点のひとつには、昨年まで勤めていた「日本一の進学校」での野球部監督経験も大きな影響を与えているという。
<次回へつづく>