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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
“東大野球部→メガバンクの銀行マン”が神奈川「野球強豪校の校長」に就任のナゼ…ビジネス界で言われた「ラグビー部と野球部の評価の差」とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by本人提供
posted2024/05/11 11:00
東大野球部で捕手として活躍した朝木秀樹氏。卒業後はメガバンクの銀行マンを30年務め、今年4月に横浜隼人高校の校長に就任した
ならばここでは、ご本人の希望でもあるし、「朝木さん」と呼ばせていただこう。
一昨年、還暦を迎えられた人生の大ベテランではあるが、先生としては「1年生」。当たり前だが、ぜんぜん先生くさくない。
淡々と、おだやかに、フラットに……張った言い方もしない代わりに、おっしゃりたい事だけはピシャッとおっしゃるあたりは、生き馬の目を抜くともいわれる「金融」という社会で長く渡り歩いてきた銀行マンの「刃」のようなものが見え隠れする。
「先生、先生ってお互いを呼び合う職業って、学校もそうですけど、お医者さん、弁護士さんもそうですよね。医療サービスとか、教育サービスって言葉があるわりに、考えてみるとお金を払う側が受け取る側に対して『ありがとうございます』って言うでしょ。普通は逆ですよね、お金を受け取る側が、ありがとうって言うわけで。
だから、お互いの立ち位置をカン違いしやすい職業だと思うんですよ、先生って。そこのところ、間違えないでほしいし、『カン違いしないように』って、機会があると話すようにしてるんです」
先生たちの先生……校長という職分には、そうした役回りもあるようだ。
「銀行員の場合、あらゆる業種の、いろいろな哲学を持った人たちとのお付き合いの中で、日常的にすごくもまれるわけですが、先生の場合はそういう幅がちょっと狭いのかな。学校って、ある意味、閉鎖的な環境でもありますし『学校の常識』みたいなものが出来やすいかもしれないですね」
ビジネス界で体感した「信頼される人間」とは…?
副校長という立場から教育の現場に入って、およそ半年。
日常に出会うさまざまな事象が、とてもフレッシュに感じるという。
「長いことビジネスの世界にいて感じたのは、横浜隼人の校訓でもある『必要で信頼される人』っていうのは、自分で考えて、自分で決断して行動できる主体性を持っている人だと思うんです。隼人の生徒たちにも、ここに通う3年間・6年間で、少しずつそういう若者になってほしいんです」