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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
“東大野球部→メガバンクの銀行マン”が神奈川「野球強豪校の校長」に就任のナゼ…ビジネス界で言われた「ラグビー部と野球部の評価の差」とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by本人提供
posted2024/05/11 11:00
東大野球部で捕手として活躍した朝木秀樹氏。卒業後はメガバンクの銀行マンを30年務め、今年4月に横浜隼人高校の校長に就任した
校長という立場で、初めてメッセージを発信したこの春の入学式でも、朝木さんは、1年生たちにそう呼びかけた。
「隼人は、以前は、やんちゃな学校って言われた時期もあったようですから、その頃を知っているベテランの先生たちからは、『ウチの生徒はこうしないとダメなんです』という声も出ます。でも、私、やってみないとわからないでしょ……って思うんです。当時と今とでは、生徒たちの気質も変わってきています。『やってみましょうよ』って言うんです」
先生は何かを教えなければならない。確かにそうなのだが、そこを、ちょっと変えてみたらと、朝木さんは考える。
「まずやらせてみて、その結果が出てから、それが間違いだったら、そこで初めて手を差し伸べる。もちろん、取り返しのつく範囲の間違いですけど。そこで、どうすれば失敗しなかったのかを、一緒に考えてみる」
生徒たちが間違えないように先に指導してしまうのは、一見親切なようで、実は、生徒たちの貴重な学びの機会を失わせることになるのではと、朝木さんは心を砕く。あるたとえ話をしてくださった。
「野球部は指示されたことを一生懸命やる。ラグビー部は…」
「社会に出て、運動部出身の社員というのは一般的に重宝されます。でも、よく言われたのが『野球部出身者は指示されたことだけ一生懸命やるのに対して、ラグビー部の出身者は自分で考えて、判断して、能動的に動ける』ということです」
監督が試合中でも逐一指示を出す野球という競技と、フィールド上ではある程度、選手の判断で動かなければならないラグビー。その競技性の違いを揶揄した言説なのだろうが、朝木さんは笑い話で終わらせず、そこにも一定の理解を示す。
「もちろん個人差はあるし、一概に競技で括るのも変な話ではあると思うんですが、ある程度の“傾向”が出るということは現実がそうなんでしょう。やっぱり主体性のある人間の方が必要にされるし、頼りにもされるのは事実ですね」
だからこそ、朝木さんは生徒に主体性を持たせることが最も大事だと考えている。