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持ったままで上がり32秒7、1年7カ月ぶりの実戦で圧勝…コントレイルの背中を知る福永祐一が「排気量は一番」と絶賛した“幻の最強馬”の逸話
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2024/02/13 11:01
1年7カ月ぶりのレースを3馬身差で圧勝したシルバーステート。福永祐一は同馬のエンジンパワーを「今までで間違いなく一番」と絶賛した
2戦目は中1週で同じコースの未勝利戦。中団の外目を進み、持ったままで直線に向いた。ラスト200m付近で先頭に立つと、追われることのないまま、最後の13、4完歩は流すようにして2着を5馬身突き放した。終始馬なりだったにもかかわらず、勝ちタイムの1分34秒7は、この日に同じ条件で行われた中京2歳ステークスより1秒3も速かった。
3戦目は10月17日、京都芝2000mの紫菊賞。レース間隔があいたこともあり、プラス14kgの486kgでの出走となったが、速いスタートを切って好位の内を進み、直線で福永が軽く仕掛けると瞬時に前の馬たちをかわし、前走同様、最後は流すようにして1馬身1/4差で勝利をおさめた。
太め残りで、距離が延び、相手が強くなっても、ほとんど持ったままで上がり32秒7という驚異的な末脚で楽勝。翌年のクラシックがさらに楽しみになった。
屈腱炎で長期休養…「幻のクラシックホース」に
しかし、主戦の福永がその2週間後、10月31日のレース中に落馬して負傷。右肩鎖関節脱臼、右鎖骨剥離骨折などのため、全治5カ月と診断された。そのため、翌2016年の初戦に予定していた2月14日の共同通信杯にはクリストフ・ルメールが騎乗することになっていたのだが、それに先立ち、1月21日にシルバーステートが左前脚に屈腱炎を発症したことが発表された。長期の休養に入り、クラシックには参戦できなかった。
かくしてシルバーステートは「幻のクラシックホース」となってしまった。この世代のクラシック三冠を見ていくと、皐月賞はディーマジェスティ、ダービーはマカヒキ、菊花賞はサトノダイヤモンドが優勝。3頭ともディープ産駒である。オークス馬シンハライトもそうで、まさにディープ産駒の「当たり年」と言うべき世代であった。
1年7カ月ぶりの実戦で見せた驚異のパフォーマンス
復帰戦は2017年5月20日、京都芝外回り1800mのオーストラリアトロフィー。紫菊賞以来、およそ1年7カ月ぶりの実戦である。好スタートからハナに立ち、後続を引きつけて先頭のまま直線へ。ラスト200m付近で福永が手綱を短く持ち直すと、それを合図に加速して後ろを突き放し、最後の10完歩ほどは追われることなく、2着に3馬身差をつけてゴールを駆け抜けた。上がり3ハロンはメンバー最速タイ。逃げた馬が、持ったままで最速の末脚を使ってしまうのだから、後ろの馬はたまったものではない。