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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「初回に奪ったダウンが災いした…」井上尚弥に真っ向勝負したネリの“誤算”とは? 英国人記者が“悪童”を再評価「この階級で最後の強敵だった」
posted2024/05/08 11:05
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Naoki Fukuda
5月6日、東京ドームで行われた世界スーパーバンタム級の4団体統一戦で、ルイス・ネリ(メキシコ)に6回TKO勝ちを収めた井上尚弥(大橋)。初回にネリの左を浴びてプロキャリア初のダウンを喫するショッキングなスタートとなったが、その後、2、5、6回に合計3度のダウンを奪い返して豪快な勝利を飾った。多くのドラマを生み出したこの試合を、欧米の関係者はどう見たのか。
前編に引き続き、リングマガジンの元編集人(マネージング・エディター)であり、現在はスポーティングニュースで健筆を振るうイギリス人ライター、トム・グレイ氏に意見を求めた。リングマガジン、スポーティングニュースの両方でパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキング選定委員を務めるグレイ氏は軽量級、アジアのボクシングにも精通しており、その言葉には常に説得力がある。
後編は、ネリの戦いぶりと、井上の今後についても話を巡らせてもらった。(以下、グレイ氏の一人語り)
「ネリは戦う準備ができていた」
これまで多くのボクサーは井上と戦う前に萎縮してしまっていましたが、正直、入場や選手紹介の時点でのネリもまた“モンスター”と東京ドームに飲まれてしまっているようにも見えました。ところが、第1ラウンド開始のゴングが鳴った頃には、もう臨戦態勢が整っていましたね。
初回にダウンを奪った時に放ったようなパンチは、萎縮しているボクサーが放てるものではありません。ネリは戦う準備ができており、井上をフロアに打ち倒したあの一撃は素晴らしいパンチでした。その瞬間、場内の緊張感はすごいものがあったでしょう。
ただ、以降の展開はネリが望んでいたものになりませんでした。