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持ったままで上がり32秒7、1年7カ月ぶりの実戦で圧勝…コントレイルの背中を知る福永祐一が「排気量は一番」と絶賛した“幻の最強馬”の逸話

posted2024/02/13 11:01

 
持ったままで上がり32秒7、1年7カ月ぶりの実戦で圧勝…コントレイルの背中を知る福永祐一が「排気量は一番」と絶賛した“幻の最強馬”の逸話<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

1年7カ月ぶりのレースを3馬身差で圧勝したシルバーステート。福永祐一は同馬のエンジンパワーを「今までで間違いなく一番」と絶賛した

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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Yuji Takahashi

世界最強の称号を得てターフを去った「天才」イクイノックスをはじめ、近年、多くのスターホースが生まれている日本の競馬界。その一方で、大きな期待をかけられながら、さまざまな事情で大成に至らなかったサラブレッドも少なくない。長く競馬界を見つめる筆者が、ファンに鮮烈な印象を残した「消えた天才」の蹄跡を振り返る。後編では、三冠馬コントレイルの背中を知る福永祐一が「排気量の大きさは間違いなく一番」と絶賛した逸材の現役時代をひもといていく。(全2回の2回目/前編へ)

◆◆◆

 ディープインパクトが実戦で初めてステッキを受けたのは、デビュー4戦目の皐月賞だった。新馬戦、若駒ステークス、弥生賞をノーステッキで勝ってきたのだが、皐月賞の4コーナーで気を抜いたかのように手応えがなくなったので、鞍上の武豊が左鞭を入れたのだった。

 そこからディープは前を一気にかわし、「走っているというより飛んでいるような感じ」と武に言わしめた。

 そんなディープの産駒に、通算成績が5戦4勝で、勝った4戦すべてがノーステッキの楽勝だったという、とてつもない馬がいた。

 全5戦で手綱をとった福永祐一騎手(当時)が、デビュー前からダービーを意識したという逸材、シルバーステートである。

デビュー前の調教で「ダービーを狙う馬が出てきた」

 シルバーステートは、2013年5月2日、ノーザンファームで生まれた。父ディープインパクトの6世代目の産駒で、母はフランスの重賞を2勝したシルヴァースカヤ。母の父はシルヴァーホーク。

 馬主はG1レーシングで、管理したのは栗東の藤原英昭調教師。主戦騎手の福永がデビュー前の調教で騎乗し、「ダービーを狙う馬が出てきた」と絶賛したというエピソードはつとに知られている。

 デビューは2015年7月11日、中京芝1600mの2歳新馬戦。福永を背に掛かり気味に先行し、抜群の手応えのまま直線へ。ラスト400mを切ったところで先頭に立ち、そのまま押し切るかと思われたが、外から伸びてきたアドマイヤリードにゴール前でかわされ、頭差の2着に惜敗。アドマイヤリードはその2年後にヴィクトリアマイルを勝つ素質馬だったし、牝馬特有の鋭い末脚に切れ負けしたような印象だった。

【次ページ】 屈腱炎で長期休養…「幻のクラシックホース」に

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