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「非常に危険」の声も…ナゼ欧州王者は“禁止技”バックフリップを使った? あの先駆者ボナリーが語る懸念「大怪我した選手を大勢知っている」 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2024/01/18 11:01

「非常に危険」の声も…ナゼ欧州王者は“禁止技”バックフリップを使った? あの先駆者ボナリーが語る懸念「大怪我した選手を大勢知っている」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

欧州選手権フリーにて禁止技「バックフリップ」を披露したシャオ・イム・ファ

「バックフリップで大怪我した選手をたくさん知っている」

 だがそれほどの能力を持つボナリーにしても、バックフリップを競技で許可することには懸念を感じるという。

「後ろ向きにテイクオフするので、多くのスペースが必要なんです。選手がみんなこの技を日常的に練習するようになったら、他のスケーターにとって非常に危険だと思います。またいちいち公表されていないけれど、この技に挑戦して大きな怪我をした選手をたくさん知っています。フィリップですら、一度失敗して怪我をしたんですよ」

 フィリップというのは、長野オリンピックで銅メダルを手にした同じくフランスのフィリップ・キャンデロロのことだ。ショーマンで知られ、バックフリップは彼のショーナンバーの見せ場の一つだった。

「堂々とルールを無視」関係者からは厳しい声も

 欧州選手権で2位になったエストニアのアレクサンドル・セレフコは、バックフリップをやる気はあるかと聞かれると、練習してみて肩の脱臼をした経験があることを告白した。

 一方3位だったイタリアのマッテオ・リッツォは「ポイントになるエレメントにするには、危険すぎる。でもたとえばスプレッドイーグルのように、得意だという選手がコレオシークエンスの中にとり入れるのは良いと思います」と意見を述べた。

 最近では片手側転を演じる選手もいるし、ケビン・エイモズのように側宙を演じる選手もいる。マリニンは「ラズベリーツイスト」と名付けた彼独特の技も演じている。バックフリップも一つのバリエーションとして許可しても良いのでは、という声も理解できないではない。

 だがその一方で、「アダムのようなトップ選手が、堂々とルールを無視したのはとても残念なこと」という関係者の厳しい意見もある。「本当にルールを変えたいのならこのような形ではなくて、自国の連盟を通してISUに正式に申請するべき」というのも、確かに正論だろう。どの競技スポーツも、ルールがあって成り立っているのだ。

 一つ確実なのは、ボナリーが言うようにモントリオール世界選手権では、シャオ・イム・ファはおそらくこの技を見せないだろうということだ。宇野昌磨、イリア・マリニン、鍵山優真ら強豪たちが顔を揃えるこの大舞台では、初の表彰台を狙うファにとってマイナス2ポイントは大きすぎるリスクである。

 ペアのレフェリーとして欧州選手権に行っていたISU技術委員の岡部由紀子氏によると、大会中に技術委員会で話し合いがもたれ、ISUは現在バックフリップの危険性がどれだけのものなのか、専門家に意見を聞いている段階だという。本来のフィギュアスケートではないアクロバティックな要素にばかり注目が集まってしまう懸念もある中で、「現時点では違反要素から外しても良いのではないか? という前向きな意見も出ていますが、ISUとしては検討中です」とコメントをくれた。

 ISUが今後どのように対応していくのか、成り行きを見守っていきたい。

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