フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
「いつかパートナーと滑りたいと思って」浅田真央31歳がアイスショー「BEYOND」に込めた想い。愛を深めるシーンは官能的に…
posted2022/09/14 11:02
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
浅田真央が座長を務めるアイスショー『BEYOND』が9月10日、滋賀公演を皮切りにスタートした。精鋭10名のスケーターが、90分間を全力で駆け抜ける。そこには浅田が追求する、新たな理想のスケートがあった。
***
ゴージャスな金色のタキシード風衣装を身にまとった10名のスケーターが一斉に登場する。その中央から進み出た浅田が、観客が手を伸ばせば届くような距離をリズミカルなステップで通り抜けていく。飛び散った氷がファンの膝かけの上でキラキラと光った。浅田真央が氷上に帰ってきたのである。それも、これまでにない極上のエンターテイメントを届けるために。
小学生の頃から愛されてきた浅田も、もうすぐ32歳を迎える。2017年に引退してからは、「浅田真央サンクスツアー」で全国を興行した。202回目・千秋楽を終えると、「しばらくは、ゆっくりとこれからのことを考えたい」。やりきった笑みだった。
アイスショー『BEYOND』で浅田真央がこだわったこと
しかし休養期間に吉永小百合さん、黒柳徹子さんらと会う機会があり「私もフィギュアスケーターとして今できることを全力でやりたい」と再起。わずか2カ月後、「過去の自分を超えて進化する」という思いを胸に、新たな構想を練り始めた。それがアイスショー『BEYOND』だった。中でも浅田がこだわったのは「ショーのクオリティ」と「観客への思い」である。
ショーは、18歳の頃のエキシビションナンバー「Sing, Sing, Sing」で軽快に始まる。2曲目は22歳の時のショート「I Got Rhythm」。セットリストは、浅田の11歳から引退までの、試合曲やエキシビション曲を再アレンジしたもの。懐かしいナンバーや、思い出深いプログラムばかりだが、新たな演出と解釈で、新しい真央像が紡がれていく。
「ショー全体のストーリーは、まず光を見つけ、そこから旅に出ていくんです。そこで私達がアイスショーの中で1つ1つのことを乗り越えていき、そのパワーを集結させて、最後は花開くというもの。最後の曲は、BEYONDのために作っていただいたテーマソングなのですけれど、すべてを乗り越えて、羽をつけて不死鳥となって羽ばたくというイメージです」
最初から最後まで、解説や曲名などのアナウンスは一切なく、10人の滑りだけでストーリーを伝えていく。そのためスケーターに求められる技術も体力も、そして演技力も、果てしなく高いものになっている。