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長野五輪で禁止技「後方宙返り」を披露…“女子フィギュア界の異端児”スルヤ・ボナリーを知っていますか?
posted2022/02/07 17:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
今から24年前。6大会前のオリンピック、長野五輪。
フィギュアスケートで観客が驚嘆し、喝采をおくった光景があった。それは女子フリーでのことだ。スルヤ・ボナリー(フランス)が「後方宙返り」を行なったのである。
エキシビションやアイスショーでは男子スケーターが見せたことはある。日本でも、例えば佐野稔ら、何人かの例がある。ただ、ボナリーは女性スケーターであり、舞台は4年に一度の大舞台、オリンピックである。
他の誰もしないようなことをしたのに対し、そのまま「すごい」と受け止めた人が多くいた一方で、試合で見せたことに驚く人もたくさんいた。なぜなら、ルールで禁止されているからだ。
成績を考えればマイナスになるのになぜ……。そこにはボナリーというスケーターの足どりがあった。
体操からフィギュアスケートへ…一気に才能が開花
ボナリーは1973年にフランスで生まれ、その後にある夫妻に養女として迎えられている。スポーツは、養母が体操の教師をしていたことから体操をはじめた。
その後、スケートに足を踏み入れた。体操をしていた土台、そしてもともとの身体能力もあったのだろう。すぐに才能を開花させると、1988-1989シーズンにフランス選手権の初優勝から同大会9連覇を達成した。このシーズンから世界ジュニア選手権および世界選手権代表にもなり、1993年から世界選手権で3年連続銀メダルを獲得している。
武器は突出したジャンプで、1991年の世界選手権では、回転不足になったものの女子では初めて4回転ジャンプにも挑戦した。