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青学大、中大、國學院大…箱根駅伝の強豪校でなぜ「体調不良」が続出? 箱根の元ランナーが考えた理由「過酷な部内の競争」「メディア対応で…」
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/15 06:00
東京農業大学の1年時に箱根駅伝(1996年、10区)を走った筆者が考える、強豪校で体調不良者が続出した背景とは?
そもそも駅伝に出場する長距離の選手たちは普段、寮生活を送っているため、そこにウイルス(インフルエンザ、新型コロナ、ノロなど)が持ち込まれると、集団感染するリスクは十分にある。
どの大学も手洗い、うがい、外出時のマスクなどを徹底しているが、完全に防ぐのは難しい。というのも箱根駅伝の直前は選手たちの「免疫力」が低下しているからだ。
体脂肪率の低下で体温維持が難しくなり…
正月に元気よく駆け抜ける姿を観ると、不思議に思うかもしれないが、学生ランナーたちの心身は世間が想像している以上に繊細なのだ。
免疫力が低下する原因はいくつもある。そのなかで選手たちに大きく関わってくるのが、体脂肪率、疲労、ストレスだ。
体脂肪率は男性なら「10%~19%」が標準になる。一方で箱根ランナーの体脂肪率は10%を切ることも珍しくない。特にカラダが仕上がり、動きにキレが出てくるときは、体脂肪が少なくなっている。そして体脂肪率が低すぎると、体温維持が難しくなり、免疫力が低下していく。
直前合宿、寮生活…集団生活の落とし穴
疲労とストレスは、選手層が厚いチーム、メディアから注目を浴びる選手ほどダメージは大きくなる。
年末に体調不良者が多数出た中大のエース吉居大和(4年)が、「自分たちは優勝を目指していただけに、思った以上に一つひとつの練習を追ってしまった部分があったのかなと思います」と話していたように、ポイント練習の強度が高くなり、それが疲労の蓄積につながったようだ。
選手層が厚いチームは登録メンバー16人に入った後も、登録メンバーを中心に合宿が組まれていることが多い。全体的にレベルが上がり、晴れ舞台に立つためにはポイント練習で一回の失敗も許されないという「10/16」のレギュラー争いも熾烈になり、プレッシャーのかかる日々が続く。