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天才マラドーナの薬物使用、女性問題…「お人よしのディエゴは利用された」“恋人のような名相棒”カレッカが悔やむ「60歳の早すぎる死」
posted2023/12/03 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Alessandro Sabattini/Getty Images
縦へ抜け出すスピードがあり、技術レベルが高く、球際にも強い。右利きだが、両足と頭で点が取れるオールラウンドタイプのストライカーだった。
ブラジル人選手の多くは、現役を退くと別人のように太る。その好例がロナウド(注:1993年から2011年までレアル・マドリー、インテルなどで活躍したCFで、1994年と2002年W杯で優勝。現在47歳)。体重は100kgを優に超え、膨れた顔と突き出た腹は相撲取りのようだ。
しかし、この男は違う。10月初めに63歳になったが、スラリとしている。本人いわく、「体重は現役時代とほとんど変わらない」。現在はサンパウロ郊外の人口120万人余りの商工業都市カンピーナスに住む。自宅マンションがある建物の応接間で、ジーンズを穿いた長い脚を組み、にこやかな笑みを浮かべて長時間インタビューに応じてくれた。
カレッカは“ハゲ頭”という意味だが…
――「カレッカ」とは(ポルトガル語で)ハゲ頭のこと。子供時代に一世を風靡したカレッキーニャ(小さなハゲ)というピエロの格好をしたコメディアンが大好きで、いつも彼の歌を歌っていたのでこのニックネームが付いたそうですね。
「彼はとても陽気で、愉快な歌と数々のジョークで僕たちを楽しませてくれた。周囲の人たちからそう呼ばれるようになると、家族も僕をそう呼ぶようになった(笑)」
――実際には、あなたは髪の毛がフサフサしています。ブラジルには、あなた以外にも「カレッカ」と呼ばれる選手がいましたが、皆、ハゲ頭ではない。これは逆に言えば、ブラジルではハゲ頭が特に恥ずかしいことではないからでしょうね。日本では、誰かを「ハゲ」と呼ぶと喧嘩、それどころかハラスメント事案になりかねない(笑)。
「そうなのか(笑)。でも、僕はこのニックネームが気に入っている。全く嫌じゃない」
「W杯で素晴らしかった。ナポリに来ないか?」
――フルネームは、アントニオ・デ・オリベイラ・フィーリョ。ファーストネームはアントニオで、あなたのことをこう呼んだ数少ない1人が、かつてナポリで一緒にプレーしたマラドーナだそうですね。
「彼はいつも僕を(カレッカではなく)アントニオと呼び、僕は彼をディエゴと呼んだ」
――生前、マラドーナはあなたのことを「僕にとって最高のチームメイトであり、最高の友人」と語っていました。彼と最初に会ったのはいつですか?