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「トミは更衣室で愛されているんだ」アーセナル冨安健洋25歳、“日本人が知らない”現地評価…4カ月間で“激変”、アルテタ監督も絶賛「本当に助かる」
posted2023/12/04 17:27
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph by
AFLO
スコアラーのマルティン・ウーデゴールのジェスチャーが、冨安健洋の凄まじさを表していた。
2人の呼吸が合ってゴールを生み出したのは、11月29日に行われた欧州チャンピオンズリーグ・ランス戦でのこと。
4−0のアーセナルリードで迎えた前半アディショナルタイム、ブカヨ・サカが前線でボールを持つと、日本代表DFは自陣ペナルティエリアから猛然と走り出した。
前半だけで4点のリードを奪っている状況なら、DFは静観していても良さそうだが、冨安は猛ダッシュで加速していく。
ボールホルダーのサカを追い抜いてボールを引き出すと、冨安はファーストタッチで敵陣のペナルティエリアに侵入。右足で柔らかいクロスボールを入れ、走り込んできたウーデゴールの鮮やかなボレーシュートにつなげた。ゴールネットが揺れると、本拠地エミレーツ・スタジアムは歓喜に沸いた。
得点後、アシストした冨安は、思わず両腕を広げて笑みを浮かべる。そして、ゴール裏のサポーターに向かって大きくガッツポーズした。得点者のノルウェー代表MFがその冨安を指し、「ナイスパス」と称賛した。2人は抱き合い、ゴールを喜んだ。
アルテタ監督「トミはエクセレントだった」
冨安とウーデゴールのやり取りには伏線があった。
ウーデゴールの得点から遡ること、約20分前──。アーセナルがDFラインでパスを回していると、ランスの選手が冨安にプレスをかけた。
相手の寄せを事前に察知した日本代表は、逆サイドの方向へ大きく蹴り出す。すると、このキックが絶妙なラストパスになった。速い弾道のクロスは、ブラジル代表FWガブリエウ・マルティネッリの足元にピタリと合う。マルティネッリがカットインから鮮やかにゴールに叩き込み、冨安は1アシスト目をマークした。
興味深かったのはここからだ。素晴らしいゴールを決めたマルティネッリにチームメートが一斉に集まる中、アシスト役の冨安にひとり駆け寄ったのがウーデゴールだった。「やるじゃん」。そう言わんばかりに笑みを浮かべて日本代表を迎えたウーデゴールは、冨安の頭を撫でた。そして、2人は肩を組み、最後はハイタッチを交わした。
鋭いクロスでマルティネッリの得点をお膳立てしたのは「前半27分」。自陣から敵陣のペナルティエリアまで約80メートルを突っ走り、ウーデゴールのゴールをアシストしたのは「前半45+1分」。21年8月のアーセナル加入から、冨安が1試合で2つのアシストをマークしたのは初めてのことだ。
さらに、前半13分に生まれたカイ・ハフェルツのゴールも、冨安から出された浮き球のパスが起点だった。前半だけで3ゴールに絡んだ日本代表は、ハーフタイムで交代。試合後、ミケル・アルテタ監督は冨安を温存したことを認め、次のように褒め称えた。