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「勝てなければワシがクビになればいいだけ」4度昇格、2度降格、途中解任3回も人気銘柄の「イシさん」サッカー監督歴25年で“一番の大勝負”

posted2023/12/05 11:00

 
「勝てなければワシがクビになればいいだけ」4度昇格、2度降格、途中解任3回も人気銘柄の「イシさん」サッカー監督歴25年で“一番の大勝負”<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

2014シーズン、モンテディオ山形時代の石﨑信弘監督

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ひぐらしひなつ

ひぐらしひなつHinatsu Higurashi

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Masashi Hara/Getty Images

 優勝、残留、降格……Jリーグクラブをめぐる歓喜と悲哀は今シーズンも各カテゴリで起きた。その現場に直面する監督は、どのように選手との関係をはぐくみ、決断を思考しているのか――『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち』(エクスナレッジ)から石﨑信弘氏の項の一部を転載してご紹介します。(全4回の3回目/#1#2#4につづく)

 好成績で終えてほっと胸を撫で下ろすシーズンがあれば、不本意な戦績に不甲斐なさを噛み締めるシーズンもある。コツコツと日々トレーニングを重ねてチームに哲学を落とし込む中で、次々に訪れる予期せぬアクシデント。どんな1年も順風満帆ということなどあり得ず、サッカー監督の日常は波乱と苦悩の連続だ。

 悲惨な負け戦の直後にも中継画面に顔をさらしてインタビューに応えねばならない。憮然としていれば「負けたのはお前のせいだろう」と責められ、悔しさを押し殺せば「まるで他人事だ」と叱られる。戦績が振るわず詰め腹を切らされることも多々あり、勝てば持ち上げられ負ければ貶されて、世間の手のひらはめまぐるしく翻る。

 無数の評価が生み出す激しい渦の中心で、それが上昇気流になるようにと舵を取り続ける日々は、決して生やさしいものではない。

25年にもわたってサッカー監督を続ける「ノブリン」

 余程強靭なメンタルを備えていなくては務まらない仕事だと思うが、そのサッカー監督という仕事を、実に25年にもわたって休まず続けている男がいる。周囲からは「イシさん」、Jリーグファンの間では「ノブリン」と呼ばれて愛される1958年3月14日生まれ、石﨑信弘だ。

 初めて監督の職に就いたのは1995年。現在のモンテディオ山形の前身で当時JFL所属のNEC山形が、指揮官としての初めての戦場だった。

 そこから大分トリニータ、川崎フロンターレ、清水エスパルス、東京ヴェルディ、柏レイソル、コンサドーレ札幌、杭州緑城U-18、モンテディオ山形、テゲバジャーロ宮崎、藤枝MYFC、カターレ富山と、日本の津々浦々にとどまらず一度は中国のアカデミーにまで飛び出して、2023年シーズンからはJ3・ヴァンラーレ八戸で指揮を執る。

勝てなければワシがクビになればいいだけの話じゃから

 これで率いたチーム数はのべ13。J1から地域リーグまでの幅広いカテゴリーを網羅し、4度の昇格と2度の降格、3度のシーズン途中での解任を経験した。

【次ページ】 百戦錬磨の経験の中で、“いちばんの大勝負”は?

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