解任されてもすぐに次のオファーが届く“人気銘柄”。そうやって石﨑は行く先々で数々の栄光と挫折を、選手やクラブ関係者やサポーターとともに味わい尽くしてきた。途轍もなくうれしい日もあれば途方もなく沈んだ日もある。それでも25年も続けていれば、多少の浮き沈みも肚を括って受け止める度量が培われるものなのか。

「同じことをやっていても上手くいかないときはある。『この内容でなんで勝てないんじゃろう』というときってあるよね。まあでも、勝てなければワシがクビになればいいだけの話じゃから」

百戦錬磨の経験の中で、“いちばんの大勝負”は？

　生まれ故郷の広島訛り全開で、どんな苦境にあってもユーモアを交えつつ底抜けに明るい自然体。そんなところもJリーグファンに広く愛される所以なのかもしれない。だいぶ昔からキャラが一貫しているので、25年にわたって見続けていても、いやむしろそれだけ継続して見続けているからなのか、ちっとも老け込む気配がない。ノブリンはずっとノブリンのままだ。

　その百戦錬磨の経験の中でいまいちばん印象に残っている勝負はどれですか、と訊ねてみると、答えは意外にも即座に返ってきた。

「山形で昇格した年の、9月の水戸戦かな」

　2014年9月6日、J2第30節。アウェイのケーズデンキスタジアムで、激しい肉弾戦を制し1－0で勝利した一戦だ。その日の采配がその年のJ1昇格プレーオフ優勝への布石になったのだと、石﨑は振り返る。

モンテディオは熾烈なJ1昇格争い真っただ中だった

2014年11月のモンテディオ山形　©Kenzaburo Matsuoka/AFLO

　2014年のJ1昇格プレーオフは、ひときわ強く記憶に残るものになった。

　ぶっちぎりでJ2リーグ優勝した湘南ベルマーレとそれに続く松本山雅が自動昇格を決め、最終順位は3位からジェフユナイテッド千葉、ジュビロ磐田、ギラヴァンツ北九州、モンテディオ山形。5位のギラヴァンツは当時はJ1ライセンスを持たなかったため、プレーオフは3チームによる生き残り合戦となった。

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