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JリーグPRESSBACK NUMBER
「期待してたけど駄目じゃん片野坂」「昇格する気ないのかよ!」J3での怒号…「完全に俺のミスだ」謝罪した監督が敗戦に後悔し、気づいたこと
posted2023/12/04 11:02
text by
ひぐらしひなつHinatsu Higurashi
photograph by
Masashi Hara/Getty Images
初陣での勝利は忘れない。
開幕はホームでのAC長野パルセイロ戦だった。
J3に降格したことでサポーターも激減すると危惧されていたのだが、初めて監督として立ったスタジアムのゴール裏スタンドは予想外に、一面の青色に染められていた。片野坂の「いまこそ恩返しをするとき」という言葉に呼応するように、サポーターたちも「J3に落ちたいまだからこそ、いっそう応援するときだ」という心意気を見せてくれたのだ。
3連勝で順調なスタートを切ったかと思ったが
そんなサポーターたちの前での、初めての指揮。プレシーズンから落とし込んできた「相手の背後を突いてボールをつなぎながらゴールへと迫ろう」という狙いは、まずまず体現できていたはずだ。いまから思えば全然スムーズでも華麗でもなかったし得点も1点のみだったが、駆けつけてくれたファンやサポーターたちに監督として初めて勝点3をプレゼントできたことが、想像していた以上に大きな歓喜となってテンションが上がった。
「本当は飛び上がって喜びたいほどうれしいのですが、一応監督なので、冷静に話すようにしています」
そう正直に述べて報道陣に笑われた初めての記者会見のことも、若かったな、と思い返される。
だが、3連勝で順調なスタートを切ったかに思われた後、4戦白星なしが続いた。ともにJ3降格しJ2昇格争いの最大のライバルとなるであろう栃木SCに敗れたことも痛恨だった。
環境面が整わないJ3で、一時は10位まで転落
クラブが初めて足を踏み入れた3部リーグ。片野坂自身にとっても、それまで大都市圏のビッグクラブでコーチやヘッドコーチとして過ごしてきたJ1とは何もかもが違う、予算規模の小さな地方クラブでのJ3だ。
当時のJ3は環境面の整備も進んでおらず、テレビでの試合中継やインターネットでの配信もなかった。中学生の大会で使われるかのような競技場が会場になることもあり、真夏でも日中キックオフというスケジュール。とてもプロ仕様とは呼べないロッカールームに座り込み、選手たちもスマホでJ1の試合中継を見ながら悔しそうな顔をしている。