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「東京六大学で岡田彰布を超えた東大生がいた」東大野球部→三菱商事→上場企業社長のスゴい人生「あ、入る会社を間違えたな…」就職人気企業で感じた挫折
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph bySankei Shimbun
posted2023/11/26 17:25
写真は今年の東大野球部。エースの松岡由機投手(4年)
さらに東大は、立教にも連勝し、60シーズンぶりの4位となる。これが榊田の野球熱を再燃させたのだ。しかし、高校で野球をしていなかったブランクは大きく、思うように体が動かない。入部後1年は基礎体力づくりに専念したという。その後、2年生からは代打での出場機会を得て、3、4年時にはファーストのレギュラーとしてクリーンナップを打つようになった。
「1、2年の頃は、とにかくパワーをつけて打球を遠くへ飛ばそうと必死で、2年生のときはホームランも1本出ました。しかし、長打を狙えばそのぶん率は落ちます。そこで上級生になるにつれて、チームのために打率を上げていこうという考え方にシフトしたんです。打率を一定レベルでキープするにはどうすればいいかを3、4年時は考えていました」
打率ランキングで「あの岡田彰布を上回る」
榊田は、たどり着いたバッティング理論をこう語る。
「腕を伸ばしたポイントで捉えれば、飛距離は一番伸びますが、打率を残すために、インコースに的を絞り、体のぎりぎりまでボールを引きつけて、腕をたたんで打つことを心がけました。差し込まれたとしても、右手で押し込めば左中間にポトンと落ちる。アウトコースならば、右中間に落ちます。もちろん、もっといいあたりだったら外野の間を抜けます。そういうコツコツと積み重ねるバッティングをしました」
その言葉には数字の裏付けもあり、榊田は3年秋に打率4割5厘という驚異的な数字を残し、リーグの打率ランキングで3位に入った。他大学の選手は東大戦で打率を稼ぎやすいが、榊田にはその機会がないことを考えれば、凄まじい成績である。ちなみに、当時の打率ランキングでは、榊田の下位に早稲田4年の岡田彰布(現阪神タイガース監督)がいたというから、榊田の打棒の奮いっぷりがわかる。
「私の三振が何度もテレビに映るんです」
榊田が打率を残すバッティングにシフトしたのは、当時のチーム事情も影響している。榊田らが3年の秋シーズンで1勝するまで、東大はじつに35連敗中だったのだ。