ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
「ボールポゼッションは圧倒的にドイツだが…」トルシエも注目する日本×ドイツ戦「日本を本気で倒しにくる素晴らしいテストになる」
posted2023/09/09 11:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
今年2月にベトナム代表監督(五輪代表も兼任)に就任したフィリップ・トルシエは、躍進著しいベトナムのアイコンとしてアジアのサッカー界で再び重要な位置を占めようとしている。ベトナムは来年1月からカタールでおこなわれるアジアカップ初戦で日本との対戦が決まっている。トルシエはカタールW杯後の日本代表をどう見ているのか。日本代表のヨーロッパ遠征を前に、トルシエに聞いた。
■■■
──カタールW杯以降のアジアの状況をどう見ていますか?
トルシエ アジア内部のヒエラルキーに変化はない。日本は韓国やオーストラリア、イラン、サウジアラビアとともにアジアナンバー1の地位を保ち、この5カ国がトップを形成している。そしてこの5カ国は、世界のトップ20に近づいている(編集部注・7月の最新ランキングで日本は20位)。世界ランキングにおいてもアジアは大きな躍進を遂げた。実力的にトップ30から40に入るのは大きな進歩だ。W杯ではカタールを除きすべての国が勝利を挙げた。アジアが躍進していることの証だ。
──日本はどうでしょうか。W杯後の日本の試合は見ましたか?
トルシエ いや、エルサルバドル戦(6月15日、6対0)もペルー戦(6月20日、4対1)も見ていない。結果を聞いただけだ。
トルシエが日本の戦いから得たアイデア
──森保監督は2試合をふたつのチームで戦いました。DFこそほとんど変えませんでしたが、中盤から前はふたつの異なるユニットを先発させました。グループを大きくするために若手を起用し、プレースタイルも変更を加えました。ボールを保持し、自分たちで攻撃を構築していくスタイルです。
トルシエ W杯の日本はスピードで優位に立った。ドイツとスペインに対する勝利と、クロアチアに負けなかったことで、日本の選手や監督は自分たちのクオリティを認識した。自分たちの価値を意識できた点で、カタールW杯は日本のターニングポイントになった。また森保も、コーチングに関して5人の選手交代によりプランAからプランBに変更できることを理解した。ドイツ戦とスペイン戦で彼は戦術的にチームに変更を加え、そこから確かな確信を得た。
私もこのW杯からさまざまなアイディアを得た。特にプランAからプランBへの変更に関してそうだった。選手を4〜5人代えることで、戦術をまったく異なるものにすることができる。ひと試合の中でそれが可能になったのはとても興味深く、監督はとりわけ攻撃面で多くの変更を可能にする選択肢を持てるようになった。
その結果、私のマネジメントも以前よりいっそう攻撃的になった。森保も同じだろう。サッカーはイニシアチブをとることが大切であることを彼は理解した。イニシアチブをとれば、自分たちで決断ができる。日本の選手たちは高いレベルにあるから自分たちでボールを保持できる。その結果、日本サッカーはより攻撃的になった。