「オレがもうひとつ言いたいのは原は果たして、マスコミやファンが言うように“巨人史上最悪の四番バッター”なのか？　こういうことだよね。（中略）原のホームランや打点には、試合の大勢に関係ないものが多いという声があるように、数字がすべてではないけど、それでもオレは、「原はよくやっている」と思うよ。原にもこの先、大きく化ける可能性はあるわけ。オレは、この先原が、どこまでONに迫れるか、楽しみに見守ってやるべきだと思うね」（週刊宝石86年10月24日号）

　かと思えば、スポーツ紙の一面で「原放出、落合と交換へ」と派手に報じられたときには、揺るぎない三冠王の自信とプライドを垣間見せる。

「オレは12球団どこでも野球がやれればいいわけよ。えっ、オレと原の交換トレードの記事を読んだかって？　あったねえ。原とオレとで釣り合うかって？　そんなことオレの口からいえると思う？（ニヤリ）」（週刊現代86年11月8日号）

1985年、86年と2年連続で三冠王になった落合とランディ・バースのツーショット　©BUNGEISHUNJU

巨人トレード「中畑プラス3億円」報道

　なお、この時期の巨人は、83年のリーグVを最後に優勝から遠ざかるが、王体制1年目の84年から早くも「“巨人改造計画”の中身 トレードでのロッテ落合獲得」（週刊ベースボール84年9月17日号）という特集記事が掲載されている。頼りない四番原の代わりは球界最強スラッガー落合しかいない、というわけだ。翌85年には「交換選手は中畑プラス3億円」報道。ちなみにこの年、認定された労組日本プロ野球選手会の初代会長を中畑清、副会長は落合が務めていた。

　さらに稲尾和久監督が辞任した86年のストーブリーグは、落合自身が「稲尾さんがいないのならロッテにいる必要がない。個人事業主として、一番高く評価してくれるところと契約したい」と宣言したことにより報道は過熱。「篠塚、西本、角と交換というが落合博満は本当に巨人に必要か」（週刊文春86年11月20日号）、「巨人ロッテ担当記者緊急座談会、落合トレードの『Xデー』はいつだ？」（週刊ベースボール86年12月1日号）とオレ流の巨人移籍が既定路線のような論調も目立った。その騒動の渦中で、落合は所ジョージと出演したテレビ番組で『巨人の星』の主題歌を歌ってみせるのだ。

1985年、当時1億5000万円と報じられた豪邸前で信子夫人と　©BUNGEISHUNJU

星野仙一が明かした“ウラ話”

　しかし、交換選手で折り合わず、有藤通世新監督の「1対3になるなら全員投手を、それも若くて将来性のある投手を要求する。江川と槙原（寛己）、桑田（真澄）をくれないかな。落合の代わりになる野手はバースくらいだ。巨人にはいない」という現実味のない発言は、事実上の交渉終結宣言でもあった。

【次ページ】　星野仙一が明かした“ウラ話”