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「走っていないことに不安はない」カープ床田寛樹が今季絶好調の理由は走り込みしなかったから? どうなる球界の常識
posted2023/08/28 06:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
投手には、走り込みが欠かせない──。野球界では長く、そう言われてきた。だが、近年では「走り込み不要論」も耳にするようになってきている。果たして、どちらが正しいのだろうか。
今季、セ・リーグの投手部門で上位につける成績を残す広島の床田寛樹は、走り込まずにシーズンを迎え、そのまま走り込むことなくシーズンを完走しようとしている。
昨年8月に右足関節骨折をし、投球以外での痛みが抜けなかったことが最大の理由だ。一部別メニューで始まった春季キャンプから、手探りの調整は続いた。第2クールには全体練習に合流したものの、練習強度や調整段階が徐々に上がっていく一方で、走り込みの距離は伸びなかった。それでも本人はあっけらかんとしていた。
「ウエイト(トレーニング)でカバーします。ランニングがめちゃくちゃ大事っていうのは、あんまり分からないというか、思わないんで」
もともとランニングは好きでも得意でもなかった。走り込まずして結果を残せるのか──。周囲の不安視をよそに、本人はそれほど難しいミッションとは感じていないようだった。
「正直、僕としてはありがたかった。ランニングをしたから自信を持てるとか思ったことがないし、走らなくて大丈夫かなと(不安に)思ったこともない。ラッキーだなとは思ってはいましたけど」
担当コーチの苦悩
笑ってそう振り返る本人とは対照的に、担当する三浦真治トレーニングコーチは2月から頭を悩ませていた。
ウエイトトレーニングの重量を上げて筋力で土台をつくり、心肺機能や持久力はエアロバイクで補うなど、練習メニューを工夫した。昨季までの先発投手の調整法とはまったく異なるアプローチではあったが、シーズンを重ねながら最善を模索し続けている。