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「練習1日50分、月曜日は完休、部員は全員元投手」…で甲子園って行ける? 人気漫画家が取材で感じた「高校野球、練習“量”と“質”どっちが大事か」問題
posted2023/08/15 17:01
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
クロマツテツロウ/Tadashi Hosoda
練習は1日50分、月曜日は完全休養、部員は全員元投手……だけど神奈川県でベスト4に進出――そんな「普通の高校野球」とは一線を画すスタイルを取る相模百合ヶ丘学園高校、通称・サガユリ。その野球部の活躍を描いたコミックが『ベー革』(小学館)だ。荒唐無稽な話のようだが実は本作、完全なフィクションではない。ドラマ化もされた『ドラフトキング』(集英社)などの作者でもあるクロマツテツロウさんが作品取材を通じて感じた、現代高校野球のリアルとは?
【マンガ】『ベー革』第1話(全48枚)を試し読み
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「ウチの学校は知っての通り進学校だ。故に学業をおろそかにするわけにはいかない。校則で定められている部活動の時間は限りなく短い。その時間は、平日は一日実質50分。ハッピーマンデーはお休みだ」
そんな監督の言葉からストーリーが動き出す高校野球漫画『ベー革』。
主人公の入来ジローは尊敬する兄が行けなかった甲子園という夢舞台を目指し、相模百合ヶ丘学園高校(サガユリ)に入学する。兄ほど非凡な才能がないジローは、「兄の10倍は練習しなくては甲子園なんてとても行けない」と思っている中、入部初日に監督・乙坂真一に言われた上記の言葉に衝撃を受ける――というストーリーだ。
作中では、そんな練習時間で群雄割拠の神奈川を勝ち抜くため、これでもかというほど練習の「質」にスポットが当てられる。「質」というのは言い換えれば、「考える」こと。作中では反復練習ばかりを行うのではなく、「アタマを使え」という乙坂監督の言葉が繰り返し語られている。
実はこの『ベー革』、完全なフィクションというわけではないという。
「超合理的野球部」にはモデル校があった
ドラマ化もされた『ドラフトキング』などの作者でもあるクロマツテツロウさんが言う。
「知り合いのトレーナーさんに『面白い高校があるよ』ということで教えてもらった、ある高校がモデルになっているんです」