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侍ジャパン「ポスト栗山英樹」が難航する理由 松井、イチローは「なし」で浮上する名前と次期監督に必要な「勝つ」こと以外の条件
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/09 11:00
退任会見で花束を贈られた栗山監重。重圧を跳ね返し、最高の結果を手にしたからこその笑顔だ
代表監督人事の潮目が変わった出来事
山本浩二監督で3連覇を逃した13年の第3回大会では、大会の利益配分の不公平さを問題にした選手会が、ボイコット騒動を起こすなど、球界全体でも代表ビジネスへの注目度が高まっていた。その中で14年にはNPBと12球団の出資で「侍ジャパン」のグッズ販売や放映権料の管理、チームスポンサーの獲得などを行う「株式会社NPBエンタープライズ」が設立された。球界が代表ビジネスに本腰を入れて取り組む第1歩だった。
そしてこの代表ビジネスへの本格参入を契機に、明らかに変わったのが代表監督の人事だったのである。
ONに始まり星野、原、山本と監督経験のある指導者としての実績を重視したレジェンド系の監督から、その後は17年の第4回大会の小久保裕紀監督、更に21年の東京五輪で指揮した稲葉篤紀監督と、いずれも監督経験のない若手指導者にチームを託すことになる。もちろんそれぞれが育ってきた野球環境や野球観などを精査の上での人選だったが、同時に大事だったのが、日本代表の顔としてのフットワークの軽さだったのだ。
「そんなことを落合さんにお願いできない」
あるNPB関係者からこんな話を聞いたことがある。
「代表監督にはスポンサー企業の関係者との会食や必要ならイベントへの出席など、グラウンド外でお願いしなければならないさまざまな仕事があるんです。いくらなんでもそんなことを落合さん(落合博満元中日監督)にお願いできないですし、やってもくれないでしょう」
もちろん野球観がしっかりしていることが第一条件ではある。ただ同時にそういうグラウンド外の仕事に協力してくれるフットワークの軽さも求められることになった。むしろそこが代表監督を選任していく上での、重要なポイントになっているとも言えるのである。それが代表監督選任の実情なのだ。
そこで栗山監督の後任問題だ。
一部で候補に取り沙汰されるイチローさんや元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんが選ばれる可能性がほとんどないと言われるのは、そういう事情があるからだ。