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「中田と坂本を見ろ」村田修一の助言で代打覚醒&吉井監督もキャラ絶賛…“現役ドラフト組”ロッテ大下誠一郎(25歳)がベンチでも輝ける理由
posted2023/06/09 11:01
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Chiba Lotte Marines
大きな弧を描いて、打球はレフトスタンドポール際に吸い込まれていった。
6月3日、甲子園での阪神タイガースとの交流戦初戦。月の奇麗な夜だった。
昨年12月の現役ドラフトでオリックス・バファローズから千葉ロッテマリーンズに移籍してきた大下誠一郎内野手(25歳)は、7回に代打で登場し、移籍後初本塁打を放った。ダイヤモンドを一周しながら「ヨッシャー!」と吠えた大声は、面白いほどに聖地に響き渡る。
「野球人生は長く、バットは短くですね!」
ベンチに戻ると村田修一打撃コーチと目を合わせて笑った。コーチのアドバイスを忠実に守っての一発だった。
「中田と坂本を見てみろ」
大下はこれまでフルスイングを持ち味としてきた。時にはヘルメットが飛んでいくほどの豪快な振りで、ボールに食らいついていく。そんな大下に村田コーチは言った。
「オマエの出番はいつだ? 試合の終盤のチャンスとかだろ。マウンドにいるのは勝ちパターンのキレのある球を投げるピッチャーばかりのはず。その1打席でそんなに長くバットを持って思いっきり振って、はたして当たるのか」
タイガースとの3連戦の前、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われたジャイアンツ戦で、村田コーチはベンチで大下を呼び寄せていた。
「ほら中田と坂本を見てみろ。あれだけの打者でもバットを短く持っている。指1本、短く持って工夫をしている。あの選手たちでそうなら、オマエもやってみてもいいんじゃないか」
優しく論した。大下の目の前には日本を代表する打者たちがバットを短く持ちながら打席に立つ姿があった。
「確かにあんな人たちでも短く持ってやっている。オレみたいなやつが長くバットを持って振り回していても仕方がないと思いました」(大下)