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侍ジャパン「ポスト栗山英樹」が難航する理由 松井、イチローは「なし」で浮上する名前と次期監督に必要な「勝つ」こと以外の条件
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/09 11:00
退任会見で花束を贈られた栗山監重。重圧を跳ね返し、最高の結果を手にしたからこその笑顔だ
王監督率いた第1回大会で世界一となり、この第2回大会は優勝、連覇が必達目標とされる大会になっていた。ただ当然、アメリカをはじめ、他の出場国も第1回大会に比べるとより充実した選手、戦力をそろえて臨んでくることは目に見えていた。そこでもし優勝を逃すことになれば、監督の評価はどうなるのか。
「よく引き受けましたね」に原監督の答えは…
候補者の中には08年に日本シリーズで巨人を破り日本一監督となり、正力松太郎賞を受賞した西武の渡辺久信監督(現西武GM)らの名前も挙がった。しかし渡辺監督は候補として名前が取り沙汰されると、早々に「もっと適任者がいるはず」と“辞退”を表明。さらにその後名前が上がった他の候補たちも、次々と就任に腰を引く流れとなってしまった。
障害となっていたのはやはり、勝てなかったときのリスクだった。特に北京五輪でメダルを逃し惨敗した星野監督に対する世間のバッシングは想像以上で、その激しさを目の当たりにしたばかりだったというのも影響していたはずである。
実はここが同じように連覇を求められる次期監督選任の難しさにもつながるだろう。
09年の第2回大会では最終的に巨人で指揮をとっていた原辰徳監督が指名され、就任した。就任会見直後に「よく引き受けましたね」という筆者の直接的な質問に、原監督は「代表監督とはたらい回しにされるものではないと思っていたから、もし声が掛かれば受けるつもりだった」と答えている。そして大会では見事に連覇を果たした。
「勝つこと」以外の代表監督の役割
この第2回大会はイチローが宮崎での事前キャンプから参加したこともあり、日本代表への注目度が一躍、上昇した大会でもあった。そしてファンからの注目度が上がったことで、代表監督にとっては勝つこと以外にもう1つ、違う仕事の比重が大きくなっていく契機ともなった。
日本代表ビジネスの顔としての役割だ。