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今季日本人トップ6勝、菊池雄星は昨季までと何が違う? 被安打率、被本塁打率は増加も、四球は激減…「メジャーに来てから一番いい形」の理由
posted2023/06/06 11:01
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
JIJI PRESS
長い歳月を実感するからこそ、染み入る感慨も格別だった。ブルージェイズ菊池雄星が5月30日、本拠地トロントでのブルワーズ戦で節目の数字に到達した。今季6勝目がMLB27勝目となり、NPBでの73勝と合わせて日米通算100勝目を達成した。
先発登板を求めたチームで中継ぎに配置転換
「時間はかかったけど、こうやって100勝できたことは、もちろんうれしい」
5回3安打2失点の内容に反省点は残っても、大台をクリアした思いをストレートな言葉で口にした。
日米通算プロ14年目での大台到達は、菊池の潜在能力からすれば、決して速いペースではない。だが、菊池自身は、常に苦節が伴うことを覚悟してきた。花巻東から西武入りした後も、すべてが順風満帆だったわけではない。デビューした11年にプロ初勝利を挙げた一方、17年に最多勝のタイトルを獲得するまでに7シーズンを要した。
19年のメジャー移籍後にしても、最初から快刀乱麻の活躍を続けたわけでもない。21年のシーズン終盤は、先発ローテーションが確約されず、オフにはマリナーズとの契約延長を拒否し、FA(フリーエージェント)になることを選択した。その結果、3年総額3600万ドル(約48億6000万円)でブルージェイズと契約した。金銭的な好条件だけでなく、先発ローテーションの一角として期待されたことが、移籍を決断した最大の理由だった。ところが、昨季は不安定な投球が続き、8月中旬以降は、救援へ配置転換された。古巣マリナーズとのワイルドカードシリーズでは、登板機会がないまま、終戦を迎える屈辱を味わった。
フォーム、配球の変更で数字にも変化が…
迎えた今季は、勝負のシーズンと位置付け、大胆なフォーム改良にも取り組んだ。セットポジションでは、腹部付近だったグラブの位置を胸の前まで上げ、バックスイングの軌道をコンパクトに変更した。配球面では、日本で基本とされる低め主体ではなく、「速球は高め」「変化球は低め」と、近年のメジャー流を徹底するようになった。