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名将ペップ“CL仕様マンC戦術”は「過去の失敗から学んだ」化け物ハーランド22歳+専守防衛? “久保ソシエダに敗戦も欧州の鬼”マドリーに雪辱を 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2023/05/09 17:01

名将ペップ“CL仕様マンC戦術”は「過去の失敗から学んだ」化け物ハーランド22歳+専守防衛? “久保ソシエダに敗戦も欧州の鬼”マドリーに雪辱を<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

昨季CLではマドリーに屈したマンチェスター・シティ。ペップ・グアルディオラの戦術はアンチェロッティ監督率いる“欧州戦線の鬼”を上回るか

 チャンピオンズリーグでも目下、12得点でスコアチャートのトップを走っており、2013-14シーズンにクリスティアーノ・ロナウドが打ち立てた1シーズンの歴代最多記録の17ゴールも視野に入る。まさに規格外の超人的な才能だ。

ハーランドの凄まじい記録はペップの意図もある?

「信じられないほどに素晴らしい」とシティのペップ・グアルディオラ監督は試合後に話した。「彼はまだ22歳で、(リーグ戦は)残り5試合もある。ハットトリックした後に、私は彼を何度も途中で交代させてきた。もっとネットを揺らしてきた可能性もある」

 もっとも、ハーランドの凄まじい個人記録は、指揮官が意図してきたものでもあるように思える。

 昨季リーグ戦のシティの得点記録を見ると、最多15ゴールのケビン・デブライネの後、13得点のラヒーム・スターリング、11得点のリヤド・マフレズ、9得点のフィル・フォデン、8得点が3選手と続く。これまでのグアルディオラ監督のシティといえば、偽の9番やSB兼セントラルMFを用いてポゼッションを高め、じわじわと相手を包囲し、得点はタイミングよくボックスに入った選手に任せる印象が強かった。だからスコアラーは分散され、昨季のデブライネや一昨季のイルカイ・ギュンドアンのように、中盤の選手がリーグ最多得点者になることも珍しくなかったわけだ。

 ところが今季は、本稿執筆時点でリーグ戦のチーム得点記録は、最多35得点のハーリングの後、フォデンの10だけが二桁。つまり指揮官は今季、このノルウェー代表FWの異次元の決定力を最大限に生かそうとしているのだ。

健在デブライネ+両SBが「専守防衛」に徹した衝撃

 シティの戦術的な変化──あるいは多様性──は、ほかにもある。それは強豪との重要な対戦に向けて、練り上げられたものかもしれない。

 バイエルンとのチャンピオンズリーグ準々決勝と、アーセナルのホームに乗り込んだ今季プレミアリーグ首位攻防戦の計3試合で、シティはボール保持率が相手を下回った。そしていくつかの得点と多くの決定機は、ショートカウンターだけでなく、長い逆襲から生まれている。

 後方からのロングフィードをハーランドかデブライネに当て、他方がその落としを受けて駆け出すか、最後にリターンパスを受けてネットを揺らしているのだ。バイエルンとの第2戦でハーランドが決めたゴール、アーセナルを4-1で粉砕した試合でのデブライネの1点目はまさにこの形。それ以外にも同じパターンで相手ゴールに迫る場面が何度もあった。

 昨季までとの違いは、守備陣にも見て取れる。

【次ページ】 「時に守備に徹することも必要だ」

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