球体とリズムBACK NUMBER
名将ペップ“CL仕様マンC戦術”は「過去の失敗から学んだ」化け物ハーランド22歳+専守防衛? “久保ソシエダに敗戦も欧州の鬼”マドリーに雪辱を
posted2023/05/09 17:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Daisuke Nakashima
いよいよ、今季のチャンピオンズリーグが佳境を迎える。レアル・マドリーとマンチェスター・シティが激突する昨季と同じ準決勝のカードは、今季の事実上の決勝と言って差し支えない。
1年前は宿願の欧州初制覇を狙うシティが第2戦の90分までに合計スコア5-3とリードし、一昨季に続く決勝進出を目前にしながら、そこから2失点を喫して勝負は延長に突入。そして延長前半にカリム・ベンゼマが自ら獲得したPKを沈め、マドリーが2カード連続の逆転勝利を収めた。
彼らは決勝でリバプールを1-0で下し、あらためてチャンピオンズリーグにおける底知れぬ勝負強さを誇示した。
前身のチャンピオンズカップ時代を含め、欧州の頂点に立った回数は実に14度。次点のACミランの7回の倍だ。1955-56シーズンの第1回大会から5連覇を果たしている伝統的な名門中の名門は、2000年以降にも7度優勝している。FIFAから正式に“20世紀最高のクラブ”と認められているマドリーは、このままいけば21世紀も同じ称号を得るだろう。
プレミアのシーズン最多35ゴールという途方もない記録
対するシティは、2008年夏にアブダビの国家ファンドに買収されてから着実に力をつけ、2016年夏にペップ・グアルディオラ監督が就任してからは、国内で無類の強さを示し、プレミアリーグを4度制覇。今季も終盤にアーセナルを逆転しそうな気配だ。しかし彼らが一番欲しいのは、ビッグイヤーと呼ばれるCLトロフィーに違いない。
まさしく怪物と呼ぶにふさわしい超絶的な点取り屋、アーリング・ハーランドを昨夏に獲得したのも、そのためだ。大きくて強く、速くて巧い上、緊張など無縁のように、落ち着き払ってゴールを仕留める。ルックスや風格からしても、とても22歳とは思えないモンスターだ。
シティなどで活躍した元ノルウェー代表MFアルフィーを父に持つこの途轍もないゴールマシンは、これまでにいくつもの新記録(CLデビュー3試合の最多得点、10代の選手として同4試合の最多得点など)を樹立してきたが、5月3日のウェストハム戦で今季リーグ戦の得点数を35とし、プレミアリーグの1シーズンの最多ゴール数を更新。しかもこれまでの最多記録は、42試合制の頃にアンディ・コールとアラン・シアラーにマークされたものだ(現行の38試合制の最多記録はモハメド・サラーの32だった)。それをハーランドは31試合目の出場で破ったのだ。