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名将ペップ“CL仕様マンC戦術”は「過去の失敗から学んだ」化け物ハーランド22歳+専守防衛? “久保ソシエダに敗戦も欧州の鬼”マドリーに雪辱を 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2023/05/09 17:01

名将ペップ“CL仕様マンC戦術”は「過去の失敗から学んだ」化け物ハーランド22歳+専守防衛? “久保ソシエダに敗戦も欧州の鬼”マドリーに雪辱を<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

昨季CLではマドリーに屈したマンチェスター・シティ。ペップ・グアルディオラの戦術はアンチェロッティ監督率いる“欧州戦線の鬼”を上回るか

 バイエルンとの2試合では、ルベン・ディアス、ネイサン・アケー、マヌエル・アカンジ、ジョン・ストーンズ、ロドリと、本職はCBかその適性を持ったタフで屈強な選手を5人も先発させている(ロドリはカタールW杯でスペイン代表のCBを務めた)。アーセナル戦では4-2-4とも表現できる布陣を敷き、左SBのアカンジと右SBのカイル・ウォーカーがマイボール時に中盤に顔を出すことはほぼなく、専守防衛の役割を担っていた。

 そしていずれの試合でも、見事に目的を果たしている。つまり世界中にポゼッションスタイルを流行らせたグアルディオラ監督が今、自らそのアンチテーゼを示しているわけだ(文筆の世界でひとつの文体を浸透させた人がその後、自身でそれを破壊する行為にも似ているか)。それは彼とシティが願ってやまない欧州制覇のための最新の解答なのかもしれない。

「時に守備に徹することも必要だ」

「僕らは過去の失敗から学んだ」とベルナルド・シウバは言った。「以前は90分間ずっと試合を支配する必要があると考えていた。でもバイエルンやPSG、レアル、バルセロナ、リバプールなどとの対戦では、時に守備に徹することも必要だ。それは受け入れなければならない」

 もちろんこれまで通り、正確無比な短いパスを繋ぎ、相手を追い詰めていくこともできる。ただし、それだけでは難関を乗り越えられなかったと感じたのだろう。現在のシティは、ボールを持っていても持っていなくても、ポゼッションでもカウンターでも、敵を粉砕できる自在の強さを誇る。それが今季のチャンピオンズリーグで、6勝4分、26得点4失点の驚異的な記録に繋がっている。

 一方のマドリーも、8勝1分1敗、25得点8失点とシティに負けず劣らずの成績だし、先週末にはスペイン国王杯を制覇した。ただしラ・リーガでは――直近のレアル・ソシエダとのリーグ戦でミスから久保建英に先制点を浴び、0-2で完敗するなど――ここ10試合で5勝1分4敗と不安定だ。

 逆にシティは、プレミアリーグで10連勝をマーク。調子と内容の双方でシティが上回っているように見えるが、グアルディオラもシティの選手たちも、マドリーの底力を嫌と言うほど見せつけられてきた過去がある。

 化け物と名将の反則じみた組み合わせで悲願成就を目論むシティか、なぜか最後は笑っている欧州の鬼マドリーか──。欧州、いや世界最高のチーム同士が2シーズン連続で激突する至高の対戦。第1戦は日本時間5月10日早朝4時にキックオフを迎える。

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