Jをめぐる冒険BACK NUMBER
3度目アジア王者・浦和レッズに「神風が吹いた」逆風の前半→逆襲の後半、埼スタ全体がゴール裏状態の歌声…選手とサポで作り出した“最高の追い風”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAsian Football Confederation (AFC)
posted2023/05/07 17:04
3度目のアジア王者!浦和レッズは間違いなく、ACLという大会の価値を高めたクラブである
「今日は本当に風が大きな影響を与えたと思いますけど、自分たちのほうに神風が吹いてくれた。自分たちの日頃の行いも含めて、そういう風が吹いてくれたのかなと思います。僕自身は、(かつて所属した)徳島も非常に風が強い地域だったので、そういう経験も含めて、風の難しさは分かっていました」
その後、浦和はホセ・カンテと安居海渡、荻原拓也と柴戸海……と、プレー強度が高い選手たちを次々と送り出し、GK西川周作を中心に体を張ってアル・ヒラルの猛攻を跳ね返す。
アディショナルタイムに大久保が倒されると、バックスタンドのファン・サポーターまで立ち上がって歌声を張り上げる。まるでスタジアム全体がゴール裏と化したようだった。
“最高の埼スタ”に、浦和の勝利を告げるホイッスルが響きわたる。
こうして昨年4月のACL2022グループステージから始まった……、いや、2021年12月19日に槙野智章の劇的ゴールで天皇杯を制してから始まった“アジア王座を奪還するための長旅”は終着点にたどり着いた。
アジア制覇後もJで「もう一個ギアを上げないと」
だが、タイトルを手にした浦和の選手たちに、息つく暇はない。これまでは11月に行われてきたACL決勝が、今回から5月の開催。レギュラーシーズンはまだ3分の1が終わったにすぎない。
昨年8月にACLノックアウトステージを戦い、決勝進出を決めたあとは“燃え尽き症候群”に陥り、チームは下降の一途を辿った。同じ轍を踏むわけにはいかない。
「Jリーグの順位も悪くない位置(3試合少なく6位)にいますからね。(マチェイ・スコルジャ)監督もACLまではメンバーを固定すると話していた。逆に言えば、ACLが終わったらメンバーを変えるという意味でもあるので、全員にチャンスが巡ってくる。今出ている選手たちはもう一個ギアを上げないといけないから、気は抜けない」
関根はそう語ったが、ギアを上げなければならないのはレギュラー組だけではない。チームとしてもこのアジア制覇をきっかけに、さらに上のステージに到達すべきだろう。
本当に常勝軍団と呼ばれるようなクラブになれるのか――。マチェイレッズの真価が問われるのは、ここからだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。