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浦和の“声出しチャント復活”に鳥肌が… 小学生からサポの伊藤敦樹「らしいな」、ショルツも小泉佳穂も興奮した“静寂のち大合唱”
posted2022/08/17 06:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Hiroaki Watanabe/Getty Images
忌々しいウイルスの出現によってJリーグの試合会場から声が失われて約2年。スタジアムに、少しずつ日常が戻ってきている。
6月11日に行われたルヴァンカップの鹿島アントラーズ対アビスパ福岡戦を皮切りに、声出し応援は制限を設けながら段階的に導入されてきた。
そして8月10日は、いよいよ埼玉スタジアムの番だった。
「試合が始まったらドーンと声が来るから」
ところが、待ちに待った声出し解禁だというのに、浦和レッズのゴール裏はいやに落ち着いていた。選手たちがウォーミングアップのためにピッチに姿を現しても、鳴り響くのは場内に流れる音楽とアウェイの名古屋グランパスのチャントだけだった。
まるで、嵐の前の静けさのよう――。
それが、レッズサポーターの流儀だということを、理解している選手たちがいた。
「本当にレッズのサポーターらしいなと思いましたね(笑)。ブーイングをする感じも、らしいなと感じながら聞いていました」
そう語ったのは、小学生の頃からレッズサポーターとしてゴール裏でともに戦い、中学・高校時代は浦和の育成組織の一員だったプロ2年目、ボランチの伊藤敦樹である。
一方、今やチーム最古参選手であり、キャプテンを務めるGK西川周作も、彼らの狙いを感じ取っていた。
「ウォーミングアップ時にあえて声を出していないことは感じましたね。特に若い選手たちが試合前からサポーターの声援を楽しみにしていたので、『試合が始まったらドーンと声が来るから、想定内にしておこう』と。『コーチングが聞こえない状況になるけれど、落ち着いてやろうね』という声を試合前に掛けていました」
選手たちがいったんロッカールームに戻ってしばらく経った頃、キックオフ直前の独特な静寂を破ったのは、北側ゴール裏から発せられた大音量の『浦和レッズコール』とスタジアムを包み込むような手拍子だった。
続いて『サロコンテ』が始まると、タイミングを合わせたかのように場内から選手入場のアンセムである『ファーストインプレッション』が流れ、熱気が一層高まった。
「次はどんなチャントだろうか」「おお、そう来たか」
ピッチ上で先発メンバーによる円陣が解けると、チャントはお馴染みの『大脱走』へ。「Here We go We want Goal ララーラ ララーララ 浦和レッズ!」の歌声が響くなか、キックオフの笛が吹かれた。
ゲーム序盤には新チャントである『Forza Grande Urawa Reds』が披露され、前半の半ば、給水タイム中には『俺らの誇り共に行こうぜ』の新バージョンの大合唱が始まった。
待望の先制点は31分。生粋のレッズサポーターの伊藤がヘディングで決めると、『Go West』でゴールを祝福しながら追加点に向けて勢いづけ、『ゲットゴール浦和レッズ』の歌声が響き渡る41分には、再び伊藤が、今度はボレーシュートを突き刺した。