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“ミスター・レッズ”福田正博はなぜ古巣・浦和に厳しいのか…“サッカーの街”のクラブが果たすべき使命とは?「愛とはちょっと違うんだ」
posted2023/04/24 11:03
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Keiji Ishikawa
感じたことをしっかり言葉にして伝えていく――。
それが、日本代表や浦和レッズで活躍した福田正博の、解説者としてのモットーである。
自身の発言が少しでも議論のきっかけになればいい、そんな思いがあるからだ。
「例えばこの前、(横浜)F・マリノスと(浦和)レッズの試合の解説を担当させてもらって、酒井宏樹が凄いなと思ったんだよ。強度が圧倒的。あれがヨーロッパのトップでレギュラーを張った選手の強度なんだなと。F・マリノスの強度も高かったんだけど、酒井宏樹はそれ以上だった」
その夜のことだ。フランクフルトとRBライプツィヒの解説を務めた福田は、RBライプツィヒの強度の高さに、改めて度肝を抜かれた。と同時に、そのレベルの相手に対して普通にプレーしている鎌田大地にも感嘆するのだ。これが、世界なんだなと。
「酒井もこの中で普通にやるんだろうなと思ったけど、F・マリノス戦ほど目立たないだろうなって。だから、酒井の強度は素晴らしいですね、で終わらせちゃいけないよね。Jリーグも酒井が目立たないくらいの強度を全員が出せるようにしないといけない。もちろん、俺が何か言ったところで、変わるなんて思ってないよ。それはおこがましいことだよね。でも、俺はJリーグや日本のサッカーが少しでも良くなるように、感じたことは言っていきたいんだ」
古巣にも苦言を呈するミスター・レッズ
創設期から知るからこそ、近年のJリーグを見ていても、思うところは多い。
「若い選手がヨーロッパを目指すのは当然の流れで、止めることはできないよね。優秀な選手たち70人くらいが海を渡っているわけだ。そうした状況で、どうやってJリーグのレベルを保っていくのか。酒井宏樹のように向こうでやっていた選手が戻ってくるような環境作りも必要だし、強度やレベルを高めるために、外国籍選手枠の見直しも考えないといけない。もちろん、若い選手を積極的に起用するような仕組み作りも。もっともっと議論していく必要があるよね」
サッカー界を思う福田の眼差しは、古巣であるレッズにも同様に注がれる。
くだんの横浜FM戦でも、その時点で結果が出ていない古巣に対して苦言を呈した。
“ミスター・レッズ”と呼ばれた福田の現役時代を知る古参サポーターからすれば、厳しい言葉はレッズ愛によるものだと受け止めているに違いないが、福田をよく知らない世代からすれば、不快な思いもあるかもしれない。