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3度目アジア王者・浦和レッズに「神風が吹いた」逆風の前半→逆襲の後半、埼スタ全体がゴール裏状態の歌声…選手とサポで作り出した“最高の追い風”
posted2023/05/07 17:04
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Asian Football Confederation (AFC)
大会主催者が用意した場違いなDJの姿がオーロラビジョンに映し出されたとき、蘇ってきたのは2019年アジア・チャンピオンズリーグ決勝の忌々しい記憶だった。
一大決戦に似つかわしくない陽気なノリと煽りによって、浦和レッズのサポーターが作り出した埼玉スタジアムの雰囲気は、著しく損なわれた。
それが、アル・ヒラルに完敗を喫した要因とは言わない。力の差は歴然だった。しかし、多くの人にとって悔いの残る戦いとなったことは想像にかたくない。
4年前の教訓はピッチ内外で生かされていた
2023年5月6日に埼スタで開催された浦和とアル・ヒラルによるACL決勝第2戦――。
4年前の教訓は、生かされていた。
普段、総立ちとなってチャントやコールをリードするのはホームゴール裏の北スタンドだが、この日はアウェイゴール裏である南スタンドも同様の態勢でチームをサポートした。
両サイドから発せられる大音量の歌声はスタジアムを包み込み、あらゆる雑音をかき消した。
「アウェイサポーターをまったく感じませんでしたね。あそこ(南ゴール裏)が全面、レッズサポーターだったので、完全ホームの感じがすごくしました」
生粋のレッズサポーターであるボランチの伊藤敦樹が笑顔を覗かせる。
何度も更新されてきた“最高の埼スタ”は、この日さらに上書きされた。
そんな最高のサポートを受けたホームチームは、相手のオウンゴールで得た1点を守り抜き、第1戦と合わせて2-1でアル・ヒラルを撃破。5大会ぶり3度目のアジア王者に輝いた。2002年に現行のACLとなって以降の最多優勝回数となる。
前半は「間違いなく一番キツイ45分」だったが
それにしても苦しい戦いだった。
なんとか1-1で引き分けた敵地での第1戦も相手にボールを支配され続けたが、ホームで迎えた第2戦も、特に前半は「間違いなく一番キツイ45分でした」と小泉佳穂が振り返ったように、押し込まれ続けた。
得点を奪わなければ優勝の目がないアル・ヒラルは、立ち上がりから猛攻を仕掛けてきた。3-2-5のような形でポゼッションをするアル・ヒラルに対し、浦和は4-4-2の守備ブロックでは対応し切れず、5-3-2での撤退守備を余儀なくされた。
なかでも厄介だったのは、インサイドハーフに入ったアンドレ・カリージョだ。