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「いずれベイスターズでプレーすると思っていた」バウアー獲得の立役者が明かす“電撃加入までの舞台裏”「天丼や海鮮丼を箸で食べる姿に…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/05/03 20:00
5月3日、1軍戦初登板で見事勝利を挙げたバウアー。MLBのサイ・ヤング賞投手がNPBデビューを飾るまでには4年間にもわたるストーリーがあった
彼がDOCKに来たとき「いつかNPBでプレーしたい」
「翌2020年にトレバーが米アリゾナに作ったトレーニング施設に行く予定だったのですが、コロナもあって残念ながら実現しませんでした。ただその後も連絡を取り合い、サイ・ヤング賞を獲ったときもお祝いのメッセージを送るなど、個人的な友人関係はつづいていました」
日本野球に興味を持っていたバウアー。壁谷氏としては「いずれベイスターズに」という思いはあったのだろうか。
そう問うと「ありました」と、壁谷氏はきっぱりと言った。
「2019年にDOCKに来たとき、トレバーは『いつかNPBでプレーしたい』と明言していたんです。しかもそれはキャリアの晩年ではなく、十分に力がある時期に、と。ですから彼は本気でNPBに来ようと考えていたし、なにかあれば、とは常に思っていました。とはいえサイ・ヤング賞を獲得したほどのピッチャーですし、まだしばらく先のことだなとは考えていました」
昨年末から議論と調査を開始
風向きが変わったのは昨年末だ。12月22日、MLBからバウアーに課せられていた規定違反による処分期間が短縮されたと発表された。壁谷氏は、これはチャンスだと思った。
「22日の発表を受け、所属しているドジャースが1月6日までにロースターに入れなければ1月13日にFAになる可能性が出てきました。それぐらいから球団内では議論と調査がスタートしました」
25年ぶりのリーグ優勝、そして日本一を目指すDeNAにとってバウアーがこれ以上ない大きな戦力になることは間違いない。バウアー自身、2021年6月以来、実戦からは離れていたが、彼の性格や野球に臨む姿勢を知っている壁谷氏にすれば、そこに不安はなかった。またバウアーが持つ野球に対する知見やエビデンスは、球団の将来を鑑みれば非常に貴重で魅力的なものに映った。
「トレバーは本当に自分の肉体やコンディションを事細かに認識し、適したトレーニングをしていて、彼にとっては自分の身体におきていることすべてが説明可能なんです。彼もよく言いますが、体格的に恵まれていない自分がここまで来られたのは、試行錯誤しながらやってこられたおかげだ、と。またトレバーは『野球を次のレベルに持っていきたい』『自分の知見を次の世代につないでいきたい』とも言います。そのためにアリゾナに施設を作り、マイナーの選手を育成しているわけですが、まさに我々としてもそういったことをやりたいし、“100年先に野球を繋ぐ”“世界一の球団になる”という目標があるので、本当にトレバーほどマッチした選手はいない。DeNAとしてはメリットしかないという考えに至りました」