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「いずれベイスターズでプレーすると思っていた」バウアー獲得の立役者が明かす“電撃加入までの舞台裏”「天丼や海鮮丼を箸で食べる姿に…」
posted2023/05/03 20:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
「ヨコハマしか勝たん!」
デビュー戦となった5月3日の広島戦(横浜スタジアム)、五月晴れの高い空にトレバー・バウアーの声が響き渡る。試合後のヒーロー・インタビューで壇上に登場したバウアーは開口一番、笑顔とユーモアをまじえ詰めかけたファンを大いに盛り上げた。
さすがと言うしかないピッチングだった。立ち上がりこそボールが浮き、2回表にシンシナティ・レッズの元同僚であるマット・デビッドソンに高めのフォーシームを被弾され1失点を喫したが、その後はカットボールやカーブ、チェンジアップといった変化球を軸に修正力を発揮し、ゾーンを広く使いながら7回を98球、9奪三振で初勝利を挙げた。2020年にサイ・ヤング賞を獲得した投球術は健在だった。
いつまでも鳴りやまない拍手とバウアーコール。お立ち台でバウアーは「今までプレーした試合のなかで一番特別だった。雰囲気を作ってくれてありがとう。皆さんのことが大好きです」と語り、ベースボール・プレイヤーとしての喜びを噛みしめていた。
いずれベイスターズでプレーすると思っていました
この光景を目を細めながら感慨深い表情で見つめていたのが、横浜DeNAベイスターズのチーム統括本部副本部長である壁谷周介氏だ。
「まさか1年前、こんな光景が目の前に広がるとは思ってもいませんでしたね」
安堵と達成感が混じった響き。そして確信を込めた口調で壁谷氏はつづけた。
「考えていたよりも時期は早まりましたが、いずれトレバーはNPB……ベイスターズでプレーすると思っていました」
“トレバー”“シュウ”と呼び合う仲
諸般の事情はありつつも、これほどの大物ピッチャーがNPBを舞台に投げることは前代未聞であり、誰もが第一報を耳にしたとき驚愕したことだろう。
この“ビッグディール”といえるバウアー移籍を実現させたキーマンが、壁谷氏である。DeNAに壁谷氏の存在なくしてバウアーがハマスタのマウンドで投げることはなかったといっても過言ではない。
互いに“トレバー”“シュウ”と呼び合う、単に選手とフロントの関係ではない、時間をかけ育んできたフレンドシップ。バウアーの移籍には、通常の外国人選手獲得とは異なる“独自のルート”があった。