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「ミトマのお母さんに感謝しないと…」なぜデゼルビ監督は三笘薫25歳の才能を見抜けた? イタリア人記者が明かす「デゼルビが絶対に許さないこと」
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アレックス・フロジオ/ガゼッタ・デッロ・スポルトAlex Frosio / La Gazzetta dello Sport
photograph byGetty Images
posted2023/04/16 11:03
昨年9月、シーズン途中でブライトン監督になったデゼルビは三笘薫を積極的に起用。なぜイタリア人指揮官は三笘を“愛する”のか?
デゼルビはペップ・グアルディオラ監督に大きな影響を受けており、的確な動きで然るべきスペースを利用するポジショナルプレーの信奉者でもある。そうしたスタイルを掲げるチームの目的は、自らが占有したエリアで数的優位を生み出すことにあり(むろん、最終目的は多くのゴールと勝利だ)、選手には戦術的知性と高いボールスキルが求められる。加えて、1対1に強いアタッカーも不可欠だ。
そんな“デゼルビ式”のブライトンにおいて、三笘はもっとも1対1に強いドリブラーだ。本稿執筆時点で、三笘はドリブル数でチーム2位につけているが、その上には倍以上の試合で先発した逆サイドのウイング、ソリー・マーチしかいない。しかもドリブル成功数では、三笘(51.9%)がマーチ(47.1%)を上回っている。
「我々はミトマのお母さんに感謝しないとね」とデゼルビ監督は言う。指揮官自身も三笘の成長を促しているはずだが、まずは何より、その特別な天与の才能を称えているのだ。デゼルビは冒頭で紹介したボガや三笘といったウイングに、クロスを上げるだけでなく、内に切れ込んでシュートを狙うことを求める。そしてクリエイティブな発想やひらめきを感じたら、思い切って表現することを──今年1月のリバプールとのFAカップ4回戦で、三笘が決めた逆転ゴールは優れた技術と類稀な発想の結晶と言える。
「1対1で、ミトマは世界最高の選手のひとりだ」
「デゼルビ監督の練習は戦術的なものが多いです」と三笘は話した。「特にうちのビルドアップには、監督の色が顕著に表れていると思います。あのリバプール戦でも、自分たちが取り組んでいることがうまくできたと感じました」
一方、指揮官は次のように、三笘の印象を語る。
「1対1の勝負において、彼は世界最高の選手のひとりだ。得点も決めてくれる、重要な存在だね。さらに成長するために、ボックスでの仕事や味方と関与するプレーを増やしてほしいと思っている。彼は私の説明を正しく理解してくれているよ」
サッスオーロを率いていた頃、デゼルビは目をかけたボガがドリブルからではなく、逆サイドのクロスに合わせて試合終了間際に逆転ゴールを決めた時、ものすごく喜んだ。それはまさに、前述したリバプール戦の三笘の決勝点と重なる。デゼルビはまた、昨季に統率したシャフタール・ドネツクでこちらも左ウイングのミハイロ・ムドリクをレギュラーに抜擢し、そのウクライナ代表は今冬、チェルシーに推定総額1億ユーロで引き抜かれた。きっとウイングの育成には自信を持っているはずだ。
デゼルビが「絶対に許さないプレー」
もう一つの理由は、監督の哲学にある。デゼルビは現役時代、典型的なナンバー10の選手だった。