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「ミトマのお母さんに感謝しないと…」なぜデゼルビ監督は三笘薫25歳の才能を見抜けた? イタリア人記者が明かす「デゼルビが絶対に許さないこと」
posted2023/04/16 11:03
text by
アレックス・フロジオ/ガゼッタ・デッロ・スポルトAlex Frosio / La Gazzetta dello Sport
photograph by
Getty Images
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デゼルビは“愛弟子”を連れてこなかった
昨年11月、1カ月半前にブライトンの指揮を取り始めたロベルト・デゼルビ監督は、彼のサッスオーロ時代の愛弟子のひとり、ジェレミー・ボガについて訊かれた。このコートジボワール代表ウイングは、デゼルビがセリエA屈指のドリブラーに育て上げ、「(ドリブルに関して)ボガを超えるのはリオネル・メッシしかいない」と指揮官自身が評したタレントだ。
「ブライトンでなければ、ボガを連れてきただろう」と現在43歳のイタリア人監督は答えた。「だがここでは、そのポジション(ウイング)の補強は不要だ」
今となっては、その理由は誰もが知るところだろう。そう、三笘薫の存在だ。実際、監督のこの発言の数日前に、三笘はウォルバーハンプトン・ワンダラーズを相手に今季初ゴールを決めている。以降、この25歳の日本代表は今季リーグ戦の総得点数を7にまで伸ばしているが、それは監督からの注文に近づいていることを意味する──ひと目で三笘の特別な能力に気づいたデゼルビは、少なくとも10得点を取るようにと、三笘を焚き付けていたのだ。
三笘の先発起用“以前”は「5試合で勝ち点2」
9月にチェルシーに引き抜かれたグレアム・ポッター監督の後任となったデゼルビは当初、前任者から受け継いだチームにあまり変更を加えなかった。3-4-2-1のメインシステムをそのまま用い、左ウイングの先発には主にレアンドロ・トロサールを起用し、三笘は途中から投入していたのだ。ただしおそらくブライトンのフロントと同様に、新監督は“ポスト・トロサール”の未来を描いていた。だからこそ、後の1月の移籍期間で、アーセナルへの放出を容認したのだろう。デゼルビとトロサールの間に諍いがあったのは事実らしいが、いずれにせよ三笘がいれば、ウイングの主力が抜けても問題はないと考えていたはずだ。
デゼルビの下で三笘が初先発したのは、10月下旬のチェルシー戦だ(トロサールが前線の中央に入り、三笘は左ウイングを任された)。前月まで共に働いていたポッター監督が率いる相手に、ブライトンは4-1の完勝を収めた。デゼルビのプレミアリーグ初勝利はこれ以上ない形で記録されたわけだ。監督のプレミアデビューとなったリバプール戦で3-3の撃ち合いを演じたものの、最初の5試合では勝ち点2しか獲得できていなかったチームが突如、ビッグクラブを完膚なきまでに叩きのめし、ブライトンはここから一気に浮上していった。つまり、三笘が初めて先発起用された一戦がきっかけとなったわけだ。
「ミトマのお母さんに感謝しないとね」
このイタリア人監督が三笘を好む理由は二つある。一つ目は戦術的なものだ。