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ダルビッシュが語るヌートバー“本当のスゴさ”「異国の地でやるのは難しいことなんですけど…」球場で聞いた“大合唱”が圧巻だった
posted2023/03/11 17:01
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Nanae Suzuki
「ガンバリマッス!」
13-4と快勝した韓国戦後の取材ミックスゾーン。大勝のヒーローとなったラーズ・ヌートバーはチェコ戦への思いを聞かれ、テレビカメラに向かってお茶目に日本語で語りかけた。ユニフォームのズボンは、左膝の下がすっかり赤茶色に汚れている。打ち、走り、滑り込み……グラウンド狭しと暴れ回ったこの日の勲章だ。
試合前、ヌートバーが語りかけたこと
“闘将”としてチームを牽引した1日だった。まずは試合前の円陣。声出し役として選手たちの輪の真ん中に歩み出ると、片膝を立てて身を乗り出しチームメートに語りかけた。
「兄弟として家族として残り6試合。昨日の夜で緊張は解けてる。今日は自由に動き回りましょう」
締めは両手の平を大きく広げて手振りをつけながら日本語で叫んだ。
「ガンバリマス! さぁ、行こうー!!」
“キョウダイ”たちは雄叫びで応じ、大一番に向けた思いを一つにした。
前日の中国戦で声出しを担った村上宗隆からバトンを受けていた。ヌートバーは明かす。
「声出し役は事前に決まっていたけれど、あまり考えすぎずその時に感じたこと、正直な思いを言いました」
来日後に覚えた日本語で一番好きな言葉は「キョウダイ」だと話していた。1週間前に来日するまでは話したこともなかったチームメートが、すぐに自分を受け入れてくれたことが嬉しかった。「兄弟として、家族として」。その言葉に込めた思いは、母国で生まれた絆への感謝だ。
守備に、打撃に、走塁に…死球には「鬼の形相」
3回、試合が動き出す。エラーも絡み韓国に3点の先制を許したその裏の日本の攻撃。先頭打者の源田壮亮から連続四球で無死一、二塁となり、打席にヌートバーが立つ。制球が定まらない韓国先発の金廣鉉(キム・グァンヒョン)に対し、初球はバントを試みて揺さぶる。2球目から4球続けて投じられたスライダーを見極めてフルカウントとなった6球目を振り抜き、二遊間を破った。
反撃のタイムリーに、一塁上で思わず右拳を振り下ろし両手を広げ叫んだ。お馴染みとなった胡椒を引くポーズも、興奮のあまりペッパーミルを握りつぶすかのようにギュッとひと捻り。雄叫びをあげて見やった先のベンチでは、仲間たちがやはり胡椒を引き、拳を突き上げていた。