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ダルビッシュが語るヌートバー“本当のスゴさ”「異国の地でやるのは難しいことなんですけど…」球場で聞いた“大合唱”が圧巻だった
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2023/03/11 17:01
ラーズ・ヌートバー、25歳。来日後に覚えた日本語で一番好きな言葉は「キョウダイ」だと話していた
1点リードの5回には守備で魅せた。1死一塁とピンチを迎えた場面で、金河成(キム・ハソン)が放ったセンター前に落ちそうな浅いフライに突進し、ダイビングキャッチして好捕した。ピンチの芽を摘むビッグプレーにも、ヌートバーは「ピッチャーが全員頑張っていたので、自分の近くのボールは全部取ってやろう、ピッチャーを助けてあげようという気持ちでした」と涼しい顔だ。
一方で、大興奮の表情を見せたのがその裏の攻撃。先頭打者の近藤健介がセンターへホームランを放つと、拳を突き上げてはしゃぎ回った。攻撃では1、2番を組んで3番の大谷翔平と繋ぐ貴重な役割を担い、守備でも右中間を共に守る相棒的な存在。「すごく欲しかった1発だからね。あれで流れも変わりましたし勢いづいたのですごくエキサイティングだったよ」。相好を崩して、仲間の活躍を喜んだ。
「鬼」の形相を見せたのは6回の第4打席だ。韓国に2点差に追い上げられ、なんとかリードを広げたい場面。無死一、三塁で打席に立ったが、韓国5番手の金允植(キム・ユンシク)の2球目が左背中にドスンとぶつかった。バットを放り投げたヌートバーは、鋭い表情で左腕を睨みつけながら悠然と一塁へ。普段は温厚な25歳も、勝負の場では闘志の火を絶やさない。その思いに引っ張られるかのように、日本はこの回、大谷や吉田正尚のタイムリーも飛び出し一挙に5点を奪って試合を決めた。
国歌斉唱、観客席へのお辞儀…
この日の試合では、回を追うごと、ヌートバーが打席を重ねるごとに観客席が一斉に叫ぶ「ヌーーーーーーー!」の大合唱がボリュームを増していった。ほんの数週間前まで、野球ファンでさえ詳しく知らなかったヌートバーの存在感は、日毎に増大している。チームのため、勝利のため、誰より闘志を前面に出して戦うその姿を、知れば知るほど応援したくなるからだろう。