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将棋PRESSBACK NUMBER
「ええええっ!」AI評価値が〈1%-99%〉→〈99%-1%〉渡辺明vs藤井聡太の“シーソー神局”に「解説棋士まで息切れ…」現地取材で震えた話
posted2023/03/11 06:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
日本将棋連盟
2023年、藤井聡太五冠を中心軸に将棋界がヒートアップしている。羽生善治九段との王将戦や「一般棋戦グランドスラム」に王手をかけた朝日杯将棋オープン優勝など、話題に事欠かない。その中で世間的にわかりやすい「最年少での六冠獲得なるか」というテーマで進んでいるのが、棋王戦である。
結果の見出しだけでは伝わりきらない壮絶な戦い
5日に新潟県新潟市で行われた第3局。結果から書けば渡辺棋王が大熱戦を制し、本シリーズの対戦成績を1勝2敗とした。当日のニュースのヘッドラインは、こんな感じだった。
「藤井竜王の“六冠”持ち越し」「渡辺棋王が1勝を返し、11連覇へ望みをつなぐ」「藤井五冠の先手番連勝記録が止まる」
確かにそうなのだが……現場の末席にいた身からすると、この文字だけでは説明できないほどの壮絶な戦いだったのである。
第3局の会場となったのは新潟グランドホテル。取材控室付近でも、両対局者がせめぎ合っている緊迫感がひしひしと伝わってくる。申請を終えると椅子とPC作業スペース、ABEMAでの中継配信を確認できるスペースが確保されていた。そして奥には両対局者が頼んだとみられる“撮影用のおやつ”も。
窓越しの眼下には信濃川が流れ、その右手には国指定の重要文化財の萬代橋、そして遠くにそびえる山々は冠雪するという風光明媚な場所で、刻々と時間が過ぎていった。17時以降も、ABEMAの中継による評価値は〈50%-50%〉前後とほぼ互角を示していたが、締め切り時間が近づいてきたのか、徐々に各メディアの連絡が始まり、対局とともに緊迫度を増してきた。
再三の形勢逆転に控室が「ええええっ!」
川を挟んだビル群が夕日に照らされる時間帯、評価値が振れる。徐々に渡辺棋王の優位を示し始めると「おお、そうなったか」という声が漏れ始める。細かく評価値が動くたびに、それぞれの嘆息が交じる。そして渡辺棋王が1分将棋に突入し、そのリズムはどんどん早くなっていった。
そして迎えた、両者1分将棋の最終盤である。