「藤井聡太さんは負けた感想戦で笑顔に」渡辺明棋王との“死闘”で高見泰地七段が感じた“藤井・羽生将棋の共通点”「頓死を食らった時に…」

　3月5日に新潟市で行われた棋王戦第3局、渡辺明棋王と藤井聡太五冠との対局は形勢が最終盤に大きく揺れ動く“神対局”となった。控室など現場の雰囲気も騒然とした中で、大盤解説会で解説者を務めたのは高見泰地七段だ。

　高見七段は両者1分将棋となり、局面が目まぐるしく変化する中で必死に思考を働かせていた。解説会終了直後には「いやあ……自分が担当した解説では、今までで一番疲れました」と嘘偽りない言葉を口にした高見七段。その後、自発的に感想戦を見学するなど名局を最後まで目に焼きつけようという将棋への探求心を見せた。感想戦が終わったのち「ぜひ経験したことを言葉として残せれば」と、インタビューに応じてくれた。（全2回の第2回／「決着」編は#1へ）

解説会、ものすごい大盛り上がりだったんですよ

前日検分には高見七段の姿も　©日本将棋連盟

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――本日はお疲れ様でした。高見七段の藤井将棋解説と言えば、2月23日朝日杯将棋オープン準決勝での豊島将之九段戦も話題（※藤井玉に詰み筋があった中で劇的な逆転勝利を飾り、形勢逆転時にABEMA解説の高見七段が思わず「え？ ひえー！」との言葉を発した）になりましたが、今日の対局もスリリングでした。

高見　朝日杯で言えば、豊島九段との大熱戦の後、渡辺名人・棋王に決勝戦で勝ってという内容で……藤井五冠の強さを解説者として目の当たりにしました。そして今日もあらためて渡辺棋王、藤井五冠それぞれの強さを間近で感じられて、貴重な経験をしました。

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――最終盤は対局中継の方に目を奪われてしまったのですが、大盤解説会や解説者・関係者の様子はどのような感じでしたか？

高見　もう本当に、ものすごい大盛り上がりだったんですよ。こちらの様子もぜひ目にしてほしかったほどです（笑）。渡辺ファン、藤井ファンの方がそれぞれいる中で、対局を終えて大盤解説会に来たときには、万雷の拍手が響いていました。今回の対局に関わった棋士や関係者の皆さんも、渡辺棋王の底力と藤井五冠の執念、どちらも讃えていましたね。

藤井五冠の将棋を解説することも多い高見七段。この日は現地解説を務めた　©Asami Enomoto

焦りがあったとしてもおかしくないのに…

――先ほどの高見七段のご様子を見て、解説であれほど消耗するとは、と衝撃を受けました。

高見　これまで多分100回以上は解説をしてきたはずですが、この対局の消耗度はすごかったです。一手一手の意味を瞬時に解説していくんですけど……自分もなんとか必死に頑張っているんですよ。頑張っているんだけど、〈解説がちゃんとできなかったら申し訳ない〉と思うほどの名局でした。もちろん自分も100％は全然できてないんだけど、一手一手の意味を解説できないとその手が輝かない。だから自分もかなり緊張感を持って、対局に臨んでいるような心持ちで解説したので、非常に疲れましたね。

――今回の対局を振り返ってもらえるでしょうか。

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