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「左投手は左打者に対して有利」ってホント? 村上宗隆と吉田正尚はなぜ、”左”を苦にしない…左腕神話はもやは崩壊したのか 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/12/04 11:00

「左投手は左打者に対して有利」ってホント? 村上宗隆と吉田正尚はなぜ、”左”を苦にしない…左腕神話はもやは崩壊したのか<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

セ・パを代表する強打者、ヤクルトの村上宗隆(左)とオリックスの吉田正尚(右)。ともに左打者だが左投手を全く苦にしていない

 すでにこのオフには2件のトレードを成立させて、そのうちの1つが京田陽太内野手を出して、左の中継ぎとしてDeNAから砂田毅樹投手を獲得したトレードだった。砂田の獲得には、黄色靭帯骨化症で10月25日に手術を受けた福敬登投手の穴を埋める左のリリーバーとして期待がかかっていると言われている。

 しかし実は砂田も基本的には右打者より左打者を苦手にする左腕なのである。

 今季の砂田の1軍登板はわずか15試合で62打者としか対戦していないが、対右打者は.190に対して左打者の被打率は実に.419と打たれている。58試合に登板した昨シーズンは対右が.178で対左が.184とほぼ同じ数字だったが、自己最多の70試合に登板した18年には対右打者が.205だったのに対して、左打者には.274と圧倒的に分が悪い数字が残っているのだ。

 ちなみに左サイドスロー気味の変則左腕の福は、今季は対右が.317に対して左打者の被打率は.197、57試合に登板した昨シーズンは右打者に対しては.274だったが、左は.178と抑え込んでいる。

 おそらく立浪監督は、左打者が厚い打順での中継ぎか、それこそ左のワンポイント的な役割を算段してのトレードだったと思うが、だとすると全くの的外れとなる可能性があるということだ。

原監督の考え「君の仕事は左投手を打つことだよ」

 単純に「左は左に強い」という昭和の野球の思い込みは、痛い目にあう。それだけは間違いないだろう。

 一方で代打を起用する場面では、左対左、左対右という点では、こういう考え方も1つではあると思う。

「右のバッター、特に若い控え選手には『君の仕事は左投手を打つことだよ』という役割を与えている。だからたとえデータ的にはマウンドの左投手が右打者より左打者の方が苦手でも、あえて右を使うことはある」

 巨人・原辰徳監督の考えだ。

 この言葉の背景には実は、右打者は多くが右投手よりも左投手の数字がいいという傾向がある。

【次ページ】 昭和の”左腕神話”はすでに崩壊したのか?

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