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「左投手は左打者に対して有利」ってホント? 村上宗隆と吉田正尚はなぜ、”左”を苦にしない…左腕神話はもやは崩壊したのか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/12/04 11:00
セ・パを代表する強打者、ヤクルトの村上宗隆(左)とオリックスの吉田正尚(右)。ともに左打者だが左投手を全く苦にしていない
左投手を苦にしないセ・パの2大強打者とは…
1番の理由は今のNPBには左投手を苦にしない左の好打者が揃っている、ということが挙げられるだろう。それこそヤクルトの村上宗隆内野手は対右投手打率が.305に対して対左投手打率は.346となる。
オリックスの吉田正尚外野手も対右投手が.324で対サウスポーは.361といずれも右投手より左投手の方が打率が高い。この2人だけでなく、ほぼ主力を担うような左打者は左右の苦手が少なく、むしろ左腕に対したときの方が、右肩を開かない意識が強くなるだけアプローチが良くなるという選手も多い。
一方、投手の側からすると、インコースの“壁”がない左打者は投げにくいという左投手がかなりいる。
典型例が中日の大野で「右打者のインコースには真っ直ぐで突っ込んでいけるのに、左の内には突っ込めない」と自分の課題を語っている。これは大野だけの問題ではなく、同じく左打者との対戦データが悪いDeNAの今永も“壁”がなくなる投げにくさを指摘しているのを聞いたことがある。
特に先発投手の場合は左打者の外角一辺倒というわけにはいかず、インコースへの配球がないと組み立てられない。ただ、壁のある右打者には思い切って懐を抉れるが、左打者にはどうしても甘くなる傾向が出てしまう。そこを左の好打者たちは肩を開かずに逃さず叩ける。
これが左投手が左打者を苦手にする1つのパターンという訳だ。
実はメルセデスの場合はそこまで左が苦手というわけではなく、被打率も対右打者が.260で対左打者が.261とほぼ同じ。だとすれば左の先発である利点は、言われるほどではなく、数字的にはそれほどないというのが実情となる。
ただこれがリリーフとなると直接、チームの勝敗に直結することになるかもしれない。
その点で気になるのが、このオフの主役となった立浪和義監督率いる中日なのである。