SCORE CARDBACK NUMBER
平野佳寿39歳「高校のときは補欠。場面なんか関係ない」オリックス日本一の舞台裏で若手リリーフ陣を救った、ベテランの姿
posted2022/11/28 00:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Hideki Sugiyama
バファローズが王手を懸けた日本シリーズ第7戦は、8回表を終わって5-0。このとき、中嶋聡監督は最終回のマウンドに平野佳寿を送り出すことを考えていた。しかし、それは実現しなかった。8回裏、1点差にまで詰め寄られ、その余裕がなくなってしまったからだ。
バファローズで実働13年、213セーブ、150ホールドを挙げ、メジャーでも3年間で8セーブ、48ホールドを記録した平野は、今年も28セーブ、8ホールドと十分な数字を残した。しかもWHIP0.80という数字は、シリーズ第7戦に登板した宇田川優希、山崎颯一郎、比嘉幹貴、ジェイコブ・ワゲスパックのWHIPをいずれも上回っているのだ。それでも平野が1点差となった9回を託されなかったのは、シーズン終盤、調子を崩していたからだった。
オールスター直前の7月、新型コロナウイルスへの感染が確認され、平野はリズムを狂わせた。WHIPはオールスター前の0.66から1.27に、前半は1点台だった防御率も3点台へ落ち込んだ。それでも平野はブルペンを支えた。リーグ優勝が懸かる試合で9回を託された阿部翔太がこう言っていた。
「もちろん9回は平野さんだと思っていたので、『阿部、行くぞ』と言われた瞬間、一気に緊張しちゃいました。でもあの日、平野さんが僕のところに来て、『次、阿部ちゃんかもよ』って冗談っぽく囁いたんです。後から聞いたら平野さん、次は僕だと知ってたみたいなんですよね」
平野の姿に、若いリリーフ陣は救われた
クローザーとしての実績と揺らぐことのないプライドがあるからこそ、チームにおける最善策を受け容れられる。そんなベテランならではのさり気ない気遣いは今年、あちこちから聞こえてきた。「どんな場面で登板することになってもネガティブな空気をまったく感じさせない平野に、若いリリーフ陣は救われた」と……思い出すのはマリナーズにいたときに聞いた平野のこんな言葉だ。
「高校(京都・鳥羽)のときは補欠だった僕です。それが今、メジャーのマウンドで投げられるんだから、場面なんか関係ありません」
39歳になる来年も、平野はバファローズのブルペンを支える。史上初の日米通算200セーブ&200ホールドまであと2ホールド――場面にこだわらない平野の勲章である。