Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“ドイツを追い詰めた本当の勝因”はシステム変更じゃない…「森保さんが提示して、あとは選手が」遠藤航の言葉が示す“4年間の成果”
posted2022/11/24 19:15
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
優勝候補の一角がタジタジになっていた。
ノイアー、キミッヒ、ミュラー、ルディガー、ニャブリ……と世界的な名手を擁し、W杯優勝4度を誇る強豪国が土俵際へと追いやられていた。
ドイツを追い詰めたのは、前半は22%しかポゼッションを許されなかった日本だった――。
3-4-2-1への変更が反撃のきっかけに
0-1で命からがらハーフタイムにたどり着いた日本は、フォーメーションを4-2-3-1から3-4-2-1へと変更する。これが、反撃のきっかけとなった。
ドイツは攻撃を組み立てる際、左サイドバックのラウムをウイングのように高く上げ、ズーレ、ルディガー、シュロッターベックの3人でビルドアップを試みる。
その3人に前田大然、鎌田大地、伊東純也の3トップが激しくプレスを仕掛け、ギュンドアンとキミッヒの2ボランチには遠藤航と田中碧が、ムシアラには板倉滉が、ミュラーには冨安健洋が……というように、潰しに行く相手をはっきりさせた。
こうして流れを手繰り寄せると、森保一監督は57分、前田と長友佑都に代えて浅野拓磨と三笘薫を投入。71分には堂安律、75分には南野拓実と、攻撃のカードを淀みなく切り、ドイツを押し込んでいく。
ピッチ上に描かれたのは、前線に左から三笘、南野、浅野、堂安、伊東が並び、その後ろに鎌田が構える超攻撃的なシフトである。そして、75分に堂安が値千金の同点ゴールを決めると、83分に浅野が起死回生の逆転ゴールをぶち込んでみせるのだ。
「監督が決断して、変えてくれたのがすべて」
鎌田がこう語ったように、指揮官の決断と勇敢な姿勢が歴史的勝利を導いたことは間違いない。脳震とうを乗り越え、フル出場を飾った遠藤もこう振り返る。
「ターニングポイントは、後半の始めからシステムを変えたこと。あそこで10分、15分様子を見ていたら、ドイツをハメることができなかった。森保さんの素晴らしい判断だったと思います」
本当の勝因は、別のところにあるのでは?
だが、システム変更はトリガーのひとつに過ぎないのではないか。
このゲームの本当の勝因は、別のところにあるように思えてならない。
ドイツ戦の前半、日本は積極的にプレスを仕掛けて敵陣でボールを奪うプランを持っていたが、それをさせてもらえなかった。だが、動揺はなかったと長友は証言する。
「もっと前から行きたかったけど、相手のポゼッションと戦術的なギャップの作り方がうまくてハメられなかった。でも、ハメられないことも想定していたので、ネガティブになることなく、ブロックを敷くことに切り替えた。誰ひとり焦っていなかった」