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ドラフトウラ話…他球団スカウトの証言「ヤクルト2位指名、悔しかった球団が多いはず」ドラフト全指名を検証する《DeNA・オリ・ヤクルト編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/10/31 17:25
オリックス1位指名の曽谷龍平投手(白鴎大・182cm80kg・左投左打)
「高校生で140キロ前後のインコース、芯でさばけるのって、西村だけじゃないですか。きれいに振り抜けばホームランだし、崩されてもヒットじゃないですか」
ならば、どうして2位の最後まで放置されたのか? そこは、投手、内野手の現場ニーズが「左打ちの外野手」のニーズを上回ったからだろう。ドラフトの指名順は、必ずしも「実力ランキング」ではないのだ。
ライトの高いネットはるか上空を、あっという間に打球が消えていく。3位・澤井廉(外野手・中京大)の打撃練習を見た人なら、その軌道は一生忘れられない。
「スイングスピードとホームランと4番打者」にこだわりを持つスラッガーだから、力を入れて強く打ちたいタイプ。なかなか両立しない「精度」という宿題はあるが、こういう打者は、むしろ5打席に一度ぐらい「ドカーン!」とやってくれたら……そういうタイプなのかもしれない。
「とにかく、投げても打っても、めちゃくちゃ前向き。やりたくてしょうがないんですね。多分、ピッチャーやりたいっていうより、野球がやりたいんだって子かもしれないですね」
知内高・吉川英昭監督が嬉しそうに笑っていた。
取材で親しくなった選手だから、支配下で呼ばれたらいいなぁ……と願っていたが、4位・坂本拓己(投手・知内高)は、早いな!と思った。そのあとに、結構な逸材たちが20人以上も指名されている「4位」なのだから、球団の評価と期待は高い。
最後の1人は、小川淳司GMの母校から挙げてきた。
5位・北村恵吾(内野手・中央大)は、阪神1位・森下翔太外野手ばかりが注目を浴びる中、その後の打席で渋い勝負強さを発揮していた。
試合や練習の要所要所で、最初の第一声を発するのは、いつも北村キャプテンだ。声や言葉や勢いで組織を活性化させられる存在。もしかしたら、「走攻守三拍子」よりずっと稀少価値かもしれない。
<日ハム・中日・ロッテ編/広島・楽天・巨人編/西武・阪神・ホークス編から続く>