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ドラフトウラ話…他球団スカウトの証言「ヤクルト2位指名、悔しかった球団が多いはず」ドラフト全指名を検証する《DeNA・オリ・ヤクルト編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/10/31 17:25
オリックス1位指名の曽谷龍平投手(白鴎大・182cm80kg・左投左打)
近年、社会人球界で、十分な実力者なのになぜか「盲点」みたいになっているような選手を、ひっそりと獲得。戦力アップしているオリックス。
今年なら、中継ぎの役割を、44試合を防御率0.61、22ホールドという素晴らしい成績で果たし、貴重な戦力となった2年目・阿部翔太。日本生命の6年目、28歳になる年に、ドラフト6位指名で入団した投手だ。
そんなドラフト上手のオリックスが、もう1人欲しかった即戦力投手とは? 気になって、仕方なかった。
ドラフト結果から推理してみることにした。1位・曽谷龍平(投手・白鴎大)、2位・内藤鵬(内野手・日本航空石川高)、3位・齋藤響介(投手・盛岡中央高)までは「満願成就」か、それ以上だろう。齋藤投手などは、よくぞ3位で……と涙ものの指名だったはずだ。
即戦力狙いということなら、5位・日高暖己(投手・富島高)より下位はないだろうから、4位・杉澤龍(外野手・東北福祉大)、5位・日高を1巡ずつ下げて、「4位」で狙っていたのでは……と推理してみた。
では、3位・齋藤響介以降、他球団が指名した「即戦力」と思われる投手は、どんな顔ぶれになるか。その中に、オリックスが狙っていた即戦力系がいたはずではないだろうか……。
挙げてみよう。東京ガス・益田武尚(広島3位)、日本通運・高野脩汰(ロッテ4位)、亜細亜大・青山美夏人(西武4位)……この中に狙っていた投手がいたのだろうか。ここから先は、皆さまの推理におまかせするとしよう。
他球団スカウト「ヤクルト2位指名、“叫んだ球団”があったはず」
【ヤクルト ドラフト指名選手(※支配下)】
1位 吉村貢司郎 24歳 投手 東芝 184cm82kg 右投右打
2位 西村瑠伊斗 18歳 外野手 京都外大西高 177cm70kg 右投左打
3位 澤井廉 22歳 外野手 中京大 184cm95kg 左投左打
4位 坂本拓己 18歳 投手 知内高 180cm85kg 左投左打
5位 北村恵吾 21歳 内野手 中央大 182cm90kg 右投右打
「2022ドラフト答え合わせ」の締めくくりは、セ・リーグVのヤクルトだ。
ペナントレースで好成績を残したチームほど、不利な役回りになるのが「ドラフト」だ。ウェーバー順で12球団目になるヤクルトは、2位指名が最後になるので、1位で確たる選手を指名しておかないとドラフト補強に大きな影響が出る。
1位・吉村貢司郎(投手・東芝)は「指名重複→抽選」にならなかったのがおかしいぐらいの投手だ。直前の「1位公表」が重複の歯止めになったのか? ドラフト的には、「1位確保」だけでも大成功となる。
ドラフト前のヤクルトとの練習試合。3イニング投げて無失点7奪三振。本拠地・神宮球場育ちの國學院大OB……いくつかの縁も重なり合っての「ヤクルト1位」なのだろう。中継ぎエース・清水昇は大学の1年先輩、共に同じ時代の國學院大投手陣で腕を磨いた仲だ。そのひたむきな「投」との向き合い方は、何よりのお手本だ。
「2巡目のいちばん最後で、ヤクルトが西村いった時、ウワッて叫んだ球団、結構あったんと違いますか。特に、2位までピッチャー、ピッチャーでいってたとことか。西村残れ、残れ、って念じてたとこ、多かったんとちゃうかな……」
そう他球団のスカウトが語るほどに、2位・西村瑠伊斗(外野手・京都外大西高)の「戦前評価」は高かった。スカウトの方とドラフト話になると、たいていは5番目か6番目ぐらいには「西村、いいんじゃないですか」とその名が挙がった。